TAKE‐ 土砂降り ページ11
「違う！」
本当のことを否定した審神者を見て、にっかり青江は深いため息を吐いた。
「いい加減、自分の弱い所を認めたらどうだい？それが理想の自分を遠ざけることになったとしても」
「違う、私は怖くなんかない。怖くなんか、ないんだ」
にっかり青江の視線に射貫かれて、審神者は言葉とは反対に俯いて首を振った。
その時、審神者が視線を遮るように、交差して顔を覆っていた細腕を、にっかり青江の右手が掴んだ。
審神者の背中を乱暴に手入れ部屋の戸に押し付け、腕を審神者の頭の横に押さえつけると、にっかり青江は笑いながら言った。
「これでも、怖くないと言うんだね」
審神者は怯えた目でにっかり青江を見た。威圧するように審神者を見下ろしている普段の喧嘩仲間を、この時初めて審神者は怖いと思った。
にっかり青江は開いている左手を審神者の首元にあてた。そして首を絞めるように手で首を包み、少しだけ力を入れた。審神者から引きつった悲鳴があがる。
「ほら、臆病だねえ。殺しはしないのに」
にっかり青江は少し乱れた審神者の襟元から覗く首筋を左手の人差し指でなぞると、噛み付いた。審神者の肩が跳ね、「痛いっ」と悲鳴が聞こえた。
その後、左手を審神者の面に置いたにっかり青江は、面に顔を近づけた。
「君がこういうとき、どんな顔をしているのか、気になってしょうがないんだ。ねえ、いつものように怒鳴らないのかい？」
「嫌」
面の下から、懇願するような涙声が聞こえてきた。にっかり青江は構わずに面をずらそうとする。
それに気が付くなり審神者は懇願し始めた。
「い、今は駄目だ！見ないでくれ、頼むから！」
審神者の懇願は、どれも聞き入れられることは無かった。声はついに嗚咽混じりになり、審神者は嗚咽を呑みこむと、一言だけ言った。
「嫌だっ……」
瞬間、にっかり青江の動きがぴたりと止まり、彼は我に返ったように審神者を凝視した。
面の下にあった頬は涙でぐしょぐしょになり、いつも罵り言葉を吐く唇は嗚咽を殺そうと真直ぐに引き結ばれている。
にっかり青江は思わず審神者から手を離して半歩下がった。
審神者は拘束が無くなったと分かると、床に置かれていた手燭を引っ掴んで乱暴に手入れ部屋の戸を開閉して出て行った。
「僕は、なんて事を」
冷静になると、罪悪感だけがにっかり青江の胸中を満たしていった。
もう二度と審神者が今まで通りに接してくれることはないだろうと悟ったにっかり青江は、やっと自分の傷が癒えていることに気が付いた。
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いなほん(プロフ) - 最゛高゛で゛す゛……!!!!素敵なにっかりさんをどうもありがとうございました！ (2016年12月4日 17時) (
レス) id: eb5ee429dc (このIDを非表示/違反報告)
新鮮な鉛筆(２B)(プロフ) - 拳銃さん» すみません、御指摘ありがとうございます。次のお話で、書き方を変えてみます…。 (2016年9月16日 21時) (レス) id: 873a9a633f (このIDを非表示/違反報告)
拳銃(プロフ) - もう少し間を開けた方が読みやすくなりますよー。はっきり言ってこれ読みにくいですね。二、三行で良いので間隔取ってくださいね(´-ω-`) (2016年9月15日 23時) (レス) id: d214872701 (このIDを非表示/違反報告)
ルサルカ(プロフ) - 新鮮な鉛筆(２B)さん» ありがとうございました！電車の中なのにニヤケちゃいました！www更新のんびり待ってるのでのんびり頑張ってくださーい！応援してますw (2016年9月9日 19時) (レス) id: 2218d295b6 (このIDを非表示/違反報告)
新鮮な鉛筆(２B)(プロフ) - ルサルカさん» 「待つ」ですか、リクエストありがとうございます！また時間が開いたら書かせていただきますね。 (2016年9月4日 8時) (レス) id: 451b47dddc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：新鮮な鉛筆(２B) | 作成日時：2016年8月10日 13時
