小さな背中、大きな優しさ【ワールドトリガー】

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村上side






話を盗み聞きするつもりはなかった



Aを探していたら偶然話を聞いてしまったのだ

もちろんすぐにその場を離れたが







『ま、もし行く当てがなけりゃいつでもうちの隊に来いよ。

案外うちの隊服似合うんじゃねぇか？』






荒船のその言葉が耳から離れない






被せられた帽子の隙間からちらりと見えた
泣きそうなAの顔も忘れられない









あんなAの顔は久しぶりだった…









幼馴染みの俺から言わせてもらえばあれが
Aの素なわけで




逆に今のAには違和感を覚えるほどだった









「おっ、鋼じゃねぇか。めずらしいな！」


「少しAに用事があってな…」



「Aなら向こうに行ったぞ。さっきまで
話してたからまだ近くに＿＿＿」




「そうか。じゃあ探してみる」








荒船の言葉を遮り指差された方へ歩きだす

今は荒船と話したい気分ではなかった




俺では、もう見ることの出来ないAの素を容易く見られてしまったことにあまりいい気がしなかった






少し歩けばすぐにAは見つかった


その顔はまた泣きそうな顔だった




名前を呼べば驚いた顔をする

用件を伝えるとほっとしたような、がっかりしたような顔を



あぁ、こんな顔も久しぶりに見る





そして今までひそかに思っていたことを
言ってしまった







「俺、ずっと思ってたんだ。

最近のAは変だって」

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