42幕 可愛い笑顔はドーナツから ページ45
神威と信女は暫く寄り添っていた。あの熱いキスから結構時間が経ったが、まだ二人の唇の熱は中々冷めなかった。
ひたすら静寂。
神威は信女の肩に顔を預けたまま左にある彼女の顔へと向き、そっと目を開いた。
信女も神威の肩に頭を寄せる。右耳を肩にあて、彼の方を向く。
「…………」
「…………ぐきゅるるるるる」
不意に神威の腹の虫が静寂を切る。
「「…………」」
…が、またしても静寂。だが、この静寂はいい感じの空気をぶち壊すものだった。
「…神威」
「…や、ごめん。お腹空いちゃった」
そんな彼に信女は小さくため息をつき、持参していたドーナツを彼に渡した。
「お腹空いてるんでしょう?…実はコレ昨日貴方と買いに行ったドーナツ」
「…え?何で…。食べなかったの?」
すると彼女は少し俯いた。顔は見えないが耳は少し赤かった。
「…どうしても食べられなかった。貴方の事ばかり考えてしまって」
「信女…」
神威は俯いたままの彼女の手に握られているドーナツを自分の口に運ばせた。もちろんそうさせるという事は、また彼の胸に飛び込む形になるという事だ。
神威は自分の胸に飛び込んできた彼女の腰に手を回すと、神威は悪戯そうに笑った。
「信女、食べられないなら俺が食べてあげる。だから…食べさせてくれる?」
「…ん」
信女は頬を染めたままコクっと頷き、彼の口にドーナツを運ぶ。
が、信女は俯いたまま口に運ぼうとしていたのでドーナツは神威の口に運ばれることなく彼の顔面にアタックした。
「ぶっ」
「…え?」
そして何かにぶつかった感触を感じ、初めて信女は顔を上げる。そこにはドーナツの穴に鼻がはまった神威の愉快な顔があった。
「……ふっ」
その絵面に我慢できなくなったのか信女は軽く噴き出した。その様子に神威は心底驚いた。
「…信女、笑うともっと可愛い」
そう言って彼女に顔を近づける神威。そのわずかな距離に信女は一瞬目を見開き、そして瞳を閉じてその距離を埋めた。
「んっ」
突然のキスに神威は思わず声を漏らす。
暫くして唇を離した彼女に神威は少し悔しそうな顔を向ける。
そしたら彼女は…、少し笑った。
「…信女」
「何?」
「好き」
「…っ!」
信女は彼の言葉に相当驚き、そしてたちまち顔を赤くする。
「ハハ、顔真っ赤w」
「…神威、私も貴方が好きよ」
「分かってるヨ。キスの時伝わったからネ♪」
「…っ、貴方ってつくづくズルい人…」
そして、二つの影は再び重なったのだった。
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胡乱 - 読ませていただきました!もうホント最高ですた!d(´▽`)bもともと沖神は好きだったんだけど威信のことよく知らなくて…でもめっちゃ好きなりました!!続編も楽しく読ませてもらいます! (2018年3月30日 12時) (レス) id: eb800c7b82 (このIDを非表示/違反報告)
湖@清光可愛い鯰尾君可愛い亀ちゃん大好き!!! - すっごく面白いです!沖神最高ですね!威信も良いし………はぁぁ………最高です。続編も頑張って下さい!直ぐ見に行かせて貰います!応援してます! (2018年2月27日 17時) (レス) id: 073b3b6cdc (このIDを非表示/違反報告)
プリンちゃま(別垢)(プロフ) - nonさん» ありがとうございます!(`・ω・´) 更新私も頑張りますので、nonさんも頑張ってくださいね!応援してやす (2017年8月16日 16時) (レス) id: 5afe51ca08 (このIDを非表示/違反報告)
non(プロフ) - うぉおぉお!!最っ高でしたー!見させていただきました!凄く良かったですよーー! (2017年8月14日 20時) (レス) id: 0592968b68 (このIDを非表示/違反報告)
チョコマシュマロ(プロフ) - 最高でした! (о´∀`о) (2017年4月8日 8時) (レス) id: 3e9931ebd4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:交差点プリン x他3人 | 作成日時:2016年7月28日 22時