悪役令嬢、魔王目指しま〜っす。

第二十六話。 ページ27

「えっと…リーレナです…。よろしくお願いします。」


リーレナ。


そう、この子こそが、この復讐ものの漫画の主人公ちゃんなのである。


「リーレナ、今日から君はリーレナ・ウィストンなんだ。自己紹介の時もそう言いなさい。ね？」


「あ…はい、すみません公爵様。」


「おや…公爵様だなんて言わずに気軽にお父様と呼んでおくれ。」


そしてこの公爵の態度の違い。


これは確かにグレるわー、全部公爵が悪いわー。


公爵がリーレナと接するときは、私を見るときのような冷たい視線ではなく、


父親らしい暖かく優しい目だ。


私には一度も向けたことのない優しい笑みを、血の繋がらない見ず知らずの少女に向けているのだ。


こりゃレオンフィーナもグレるはずだわ。


お話を知ってるほぼ赤の他人の私でも腹立つもの。


だがしかし、このリーレナという少女には罪がないというのも事実。


レオンフィーナは恨む相手を間違えたんだ。


恨むべきはリーレナじゃなくて、この最低な父親である公爵だ。


そりゃ公爵にも、いろいろ思いはあるんだろうけれど。


そんなのは公爵の事情であって、レオンフィーナには関係のないことなんだよ。


まぁ、私はレオンフィーナじゃないからいいけどさ。


「公女、今日からリーレナはお前の妹だ。仲良くするように。」


公爵はいつもの冷たい表情に戻ると私にそう言った。


それは、きっと。


お願いじゃなく、命令なんでしょう？


私達はあくまで”公爵”と”公女”で、親子ではないから。


あぁ、本当に憎たらしい男だ。


私はニコリと笑顔を浮かべる。


「仰せのままに。」


ならお望み通り、娘じゃなくて公女としてお前の前に立ってやるよコノヤロー。


「それじゃあリーレナ、何か困ったことがあれば公女に聞きなさい。いいね？」


「わ、わかりました公爵様…いえ、お父様。」


「よしよし、良い子だリーレナ。」


…私は一体何を見せつけられているんですか？


わー、仲良しなんだねー、素敵な親子愛だねー、幸せそうだねー、


で、なんでそれを私の部屋の中でやるんですか？嫌がらせですか？


そんな仲良し親子風の会話をすると、公爵は部屋から出て行った。


リーレナは相変わらずもじもじとした様子で私に何かを言おうとしているも、


言い出せないでいる模様だ。


「…レナ。」


「えっ？」


「リーレナってなんか呼びずらいから、レナって呼んでもいい？」


私がそう言うとリーレナは目を輝かせた。

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