story29 ページ35
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Aさんをベットに寝かせ、ちゃっかり自分も隣に潜り込む。
「可愛いですよ。ホント、困るくらい」
「そんなこと言うのはお前くらいだ…って…こ、こら降谷!」
「それでいいんです。こんな可愛いあなたは、俺だけが知ってればいい」
ベットの中で、ぎゅう、と抱きしめれば、Aさんは真っ赤になって黙りこくった。
あー、やばい。頑張れ俺の理性。
腕の中のやわらかな肌と体温に目眩を覚えつつ、艶やかな漆黒の髪を撫でる。
「…Aさん、オムライスと甘いもの以外に好きな食べ物あります?」
「…なんだ、急に」
「気が紛れるかと思って」
主に俺の。
それと純粋に、Aさんのことをもっと知りたいというのもある。
俺が今まで知り得たAさんだけじゃなくて、彼女の口から教えてもらうAさんにも興味がある。
「…和食ももちろん好きだが…洋食もなかなか…」
「洋食?」
「……ハンバーグとかナポリタンとか」
「………Aさんって、お子さまランチみたいなの好きなんですね」
「………言うな」
再び可愛いなぁ、とこぼせば、ぽかりと胸を叩かれた。
可愛さが増すだけであることを、この人はきっと知らない。
「……降谷は?」
「…え?」
「…降谷の好きな食べ物は?」
嬉しい。単なる会話の延長上かもしれないけれど、俺に興味をもってくれたのかな、なんて思ってしまう。
「そうですね…やっぱり和食は好きですけど、ガッツリ肉系とか無性に食べたくなりますね」
「はは、若いな」
好きな飲みもの、好きな音楽、好きな本…他愛のない、けれどいとおしいひとつひとつの会話を、大切に心にしまっていく。
ざぁざぁと降り続く雨音をBGMに、かすかな話し声だけが優しく響いて。
時折鳴る雷に、身を竦ませるAさんを抱きしめて、頭を撫でて、その髪に口付ける。
「…大丈夫。俺が傍にいますから」
冷たい雨音とは反対に、やわらかな体温を寄せあって。
ひどく穏やかに、その夜は更けていった。
**************
この話を書こうと思った時から、書きたかったお話のひとつ「雷編」でした。
書いてみたら思いの外長くなってしまいましたが…(^_^;)
ちなみに副題は「可愛い夢主を降谷さんがひたすら愛でる回」です(笑)
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ぱぱんだ(プロフ) - 朝顔さん» はじめまして!他のぱぱんだ作品も見ていただけたようでとても嬉しいです!これからも更新頑張りますね(*^^*) (2018年6月19日 17時) (レス) id: d7440f8beb (このIDを非表示/違反報告)
朝顔 - はじめまして。どの作品もとっても素敵ですごく感情移入して読めました!!これからも応援してます! (2018年6月19日 11時) (レス) id: e330775e06 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 伏見さん» こんばんは!コメントありがとうございます(*^^*)悶えていただけるほど可愛く書けたようで、嬉しく思います(笑) そしてこちらこそ読んで下さってありがとうございます(*^^*)これからも、ぜひお付き合い下さいね! (2018年5月31日 22時) (レス) id: d7440f8beb (このIDを非表示/違反報告)
伏見(プロフ) - こんばんわ!小説読んで九条さん可愛いイイイイイイってめっちゃ悶えました...kawaiiの暴力です...こんな素敵な小説をありがとうございます!! (2018年5月31日 21時) (レス) id: 28d5c19c28 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - Kanoさん» おぉ…!何やら熱烈な告白を受けた気分になりました…!(やめなさい)ありがとうございます!そう言っていただけると、本当に励みになります(*^^*)これからも更新頑張ります! (2018年5月16日 17時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年5月7日 21時