◆52◆ ページ8
・
「っくく、そう、ええ子。
はよおいで？」
一歩、また一歩と
足がカミヤマの方へと進んでいく。
邪魔な体たちを踏みよけて、
テーブルの間をすり抜けて、
次第に彼の顔がはっきりと見えてきた。
あと少し、手を伸ばせば触れられる。
そんな中、私は今にも倒れそうだった。
慣れない靴で歩き続けた疲労と
空間中に広がる薬品臭に
少なからず私自身やられていたようだ。
それでも彼の元まではなんとか辿り着いた。
椅子の前に座り込み
くらくらする頭を持ち上げてカミヤマを見つめる。
「…っふ、犬みたいな目。」
体温の無い大きな手が私の頭を撫でた。
まるで動物にするのと同じ、押さえつけるようなソレだけど
これ位が逆に心地いい。
目を閉じてうっとりと彼の手つきに身を委ねる。
頭の後ろを通り、
頬のラインにかけてをゆっくりなぞる手の平。
やがてそれが唇を覆ったのを見計らって
ちろりと舌を出して舐め上げた。
指と指の隙間に舌を這わせて、
私なりの服従の証。
だってもう、逃げる場所も意味も、
どこにもないんだから…。
少しの間、カミヤマは濡れて光る指を見つめていたけれど
何かを受け取るように、その上から口づけた。
いつの間にやら、案内役の男は姿をくらませたみたい。
転がる人間達も、今となっては場に華を持たせる為の置物。
まさしくここは、私とカミヤマのためだけに用意された世界。
『…ねぇ、早く続きを頂戴？』
背後で扉の閉まる音がする。
全てが始まる、合図だった…。
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煌(Huang) - 初めて読みました。一気に0 から読んでしまえるほどとてもとても引き込まれました。面白かったです。楽しい作品をありがとうございました。おからさんの文体読みやすくて情景も思い浮かびやすく好きです。稚拙な感想で申し訳ありません (2017年5月30日 19時) (
レス) id: de774e9220 (このIDを非表示/違反報告)
ちーずけーき(プロフ) - 戻ってきてくれて嬉しいよ(；_；) これからも応援してます！ (2017年5月14日 12時) (レス) id: 01651542b7 (このIDを非表示/違反報告)
Ciel - おからさん、大学、おめでとうございます！そして、戻ってきてくださって本当に嬉しいです！喜びがとまらない...ジッケンダイの神ちゃんを、楽しみに待ってます！ (2017年5月6日 13時) (レス) id: 76e31cf07e (このIDを非表示/違反報告)
なーり(プロフ) - この作品大好きです！ (2017年4月23日 11時) (レス) id: 0352dc77ac (このIDを非表示/違反報告)
レモナ(プロフ) - またジッケンダイ見られるようになるのを楽しみに、私も受験勉強に励みたいと思います。頑張ってください！ (2016年10月1日 21時) (レス) id: 605c165085 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おから
x他1人 | 作成日時：2016年6月26日 15時
