□38話■ ページ8
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A「えっ…？」
打ち上がった花火と同時に
明らかに青ざめていくわんこ。
色とりどりの花火は
その間にも次々と打ち上げられて
あたりは歓声に包まれている。
和也「どした？」
A「今…声が…」
和也「声？」
わんこの言葉の意味がわからず困惑していると
いや、気の所為です
って、わんこは花火の方に顔を向けた。
どう考えても様子がおかしい。
こんな動揺してるわんこは初めて見る。
「やっぱり、Aだ」
と、その時
隣からかけられた男の声に
わんこの体がビクッとしたのが、手から伝わってきた。
声の方を振り返ると
そこには、背が高くて見たことのない男の姿。
男「久しぶり…」
和也「え…知り合い？」
A「…はい。」
男「…元気だったか？」
A「…うん」
2人の間に流れる、只ならぬ空気と
交わされる、辿々しい会話。
こいつが何者なのかさっぱりわからないけど
俺が置いてけぼりにされてるのは、わかる。
その男は、わんこを心配そうな顔で見つめ
わんこは下を向いて目を合わせる気がないようだった。
男「…その人は？」
そう聞かれると、
わんこは繋がれてた手を、ぱっと振り払った。
ちょっと傷ついた俺は
次にわんこが口にする言葉に、衝撃を受けることになった。
A「…お兄ちゃんには、関係ないよ」
えっ…兄貴？
この人、わんこの兄貴なの？
改めてその人を観察するけど
…似てない、全く。
わんこの兄だと言うその人は
そんなわんこの態度に、ひとつため息をつく。
兄？「皆、心配してるよ。せめて連絡ぐらいよこせ」
A「…ごめんなさい」
「トモキ〜？」
兄？「あっ…じゃあ、行くわ」
A「…うん」
誰かに呼ばれたらしく、俺らの元を去っていくその人。
わんこの方に視線を向けると
さっきまで下を向いていたのに、
その人の後ろ姿を、切なげな目で追っていた。
その目は
時々わんこが見せる
あの目だった。
そっか、今までその目をしていた時
わんこは、あの人のことを思い出してたのか。
和也「大丈夫？」
A「…はい。…花火、綺麗ですね…」
和也「うん」
一応、そう返事をしたけど
その後は、何があったのか気になりすぎて
花火の形とか、色とか、大きさとか
何一つ、思い出せない。
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作者名：爽歌。
| 作成日時：2017年5月9日 16時
