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Hikaru
涼「翔太と、友達になってくれてありがとう。」
ずっとずっと一人で闘ってきて、
時には俺と喧嘩したり、舘さんとぶつかってきた翔太。
手術が近付くと俺達にも言えない不安を抱えて夜泣いて、
翔太から笑顔も笑い声も消えて、すごく心配をしたことをよく覚えている。
そんな時期も一番近くで見守ってきた舘さんだから、
翔太に笑顔が増えたこと、俺以上に喜んでた。
色んなことが思い起こされて来たけど、
きっと最期に亮平と出会えたこと、翔太も嬉しかったんじゃないかな。
黙ってサインした亮平が何を思っているか全部を知ることは出来ないけど、
手術を受けることは、一杯の不安を抱えながらも、翔太が夢見ていた未来を果たすための大きな決断。
十分な時間は無い中で静かに心を決めてくれた亮平は、
翔太に似て、すごくすごく強い子だった。
.
照「大丈夫、先生達がついてるからね。翔太もきっと見守ってくれてるから。」
向かえた手術当日。
コクンと小さく頷いた亮平が一杯頑張ってくれたのか、
翔太がずっと見守っててくれたのか、両方かな。
手術は驚く程順調に終わって、大成功。
術後の回復も想定よりずっとずっと早くて、
暖かくなってきた葉桜の季節。
地面一杯花びらに埋め尽くされた道を歩いて、亮平は退院していった。
涼「綺麗………翔太にも、見せてあげたかったな。」
静かに呟いた舘さんの声が、
風に舞った桜と一緒に空に登っていく。
ぱっと目が合ったその瞳にはうっすら光るものがあって、
向き合った俺の視界も歪み始めていた。
涼「ごめんね……ごめん翔太………」
翔太を亡くしたあの日から、亮平のこともあって根詰めて立ち止まらずに仕事してきた舘さんが初めて流した涙。
一杯泣いて俺の白衣を濡らすから連られて止まらなくて、
病院のロビーで涙が枯れる程一緒に泣いた。
翔太を亡くした悲しみがまだ癒えることは無いけれど、
短い間でも一緒に頑張った二人がそれぞれ新たな旅に出た春だった。
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作者名：りる | 作成日時：2022年11月27日 21時
