冷たい、冷たい、温かい (次元) かえで様リク ページ12
氷の張った湖の表面は危ない。
そんなことを、今の私は考えていた。
どこか他人事みたいだ。
いま私が立っているのはその、凍った水面だった。
周りは何もない、綺麗な銀世界。
数時間前、次元と言い合いになってしまった。
私の日々のイライラが爆発して、強く次元に当たってしまったんだけど。
凍った湖面に立ってみると、あぁ、なんであんなこと言っちゃったんだろう。と後悔してしまう。
今もそうやってその罪悪感から逃れたくて進んでいる。
いまにも押しつぶされてしまいそうだ。
「私が…悪かったんだ。
分かってるよ、分かってる」
ギュウッと目を閉じて歩くスピードを速める。
とたん、足もとでバリッと言う何かが割れるような音がした。
「え?」
体が傾いていく。
足元が刺すように冷たくなって、私の体は水に包まれた。
こんな状況でも頭はなぜか冷静で。
状況を理解するのにさほど時間はかからなかった。
──ああ、氷が割れて水の中に落ちちゃったんだ。
焼けるような冷たい水の中は、濁っていて何も見えない。
──自業自得かなぁ。
感覚がしだいに失われていく。
──最後に謝りたかったよ…っ!
かすむ私の頭の中で、次元は背中を向けて遠ざかって行く。
──次元、ごめん……っ!
──私が悪いの…!
私の伸ばした手は空を切る。
涙が水に溶けて消えた。
意識の消えそうな私の手を何かがつかんだ。
引っ張られる感覚。
私はゆっくり湖面に向かっていた。
*
「……A、お…い……」
誰かの声が聞こえる。
重いまぶたをゆっくり開いた。
黒いボルサリーノと髭。
あぁ。
「……じ…げん…」
「A!何やってんだ……!」
全身濡れた次元の姿が見えた。
帽子に隠れて表情はよく見えないが、心配してくれたのだろう。
「……ごめん…」
「もう良い…帰るぞ」
次元は私を抱きかかえると歩き出した。
「あの…次元?」
「……なんだ」
「さっきは…ごめん……」
「気にするな。過ぎたことだ」
そう言って少しだけ笑ってくれた。
「ありがとう……」
私も笑い返した。
「アジトに帰ったら、何があったか聞かれるよね…」
「だろうな」
「……しっかり温まろうね」
「仲良く手をつないで、か?」
返事の代わりに、私は次元の手を握った。
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すみませんでした!かなり遅くなってしまいました!
いくら遅くなっても、見捨ててはいませんので!はい!
終わり ログインすれば
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←花火よりもずっと (五ェ門) ♪ストレート♪様リク
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ゆーたそ(プロフ) - すっごいカッコイイです!ルパンもう少し増えて欲しい! (2018年12月3日 23時) (レス) id: 7df32a732a (このIDを非表示/違反報告)
礼 - 惚れたぜルパン様ァ〜 (2015年4月6日 15時) (レス) id: 24bc0e2a7c (このIDを非表示/違反報告)
☆ghost dance☆ - 気になったんですが、銭形警部の形の字が違うのでは……? (2015年2月3日 15時) (レス) id: edcaa948c8 (このIDを非表示/違反報告)
LongMine(プロフ) - 次元さんがヤバいよ// (2015年2月2日 16時) (レス) id: d84f8ae247 (このIDを非表示/違反報告)
揺楽 - 五エ門格好いいです!リクエストで、五エ門と花見へ行く話を見たいです。 (2015年1月31日 12時) (レス) id: 2bcd23b539 (このIDを非表示/違反報告)
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