其の料理人は唐突に 拾伍【食戟のソーマ】

イ「370話目だよ〜」 ページ5

「……!!!」


「何だこの美味さは……！香辛料にスパイス！刺激的なのにまろやか！じっくりと包み込むように、骨身に沁み渡るっ!!」



これこそが私の考えた、新しい中華。


「牛骨からとったスープに選び抜いたスパイス各種と大蒜、生姜を加えたカレー出汁…それがあのお月様の正体なんだ」


そのカレー出汁にゼラチンを合わせ固め…胡椒餅用の肉ダネで包み焼く。それが崩れたらカレーの旨味が麻婆に広がる！




「これが…ゆきひら・改 第二弾！」




「時限式・麻婆カレー麺……だよ!!!」


―――


「何か凄そうだぞ！」

「な、なぁ…」

「……あぁ！」



久我飯店の大行列にいた1人が抜けて、Aの屋台に向かう。

するとそれに続き、続々と人が集まる。




気がつけば、久我飯店の大行列の半分以上を崩していた。



緊急事態！パニックに陥る中華研。

しかし…




「落ち着け！ウチは10人以上の精鋭揃いだ。あのちっぽけな屋台でそんな仕事量回せるワケ無いっしょー！」




「今にパンクするに決まってるっつの!!」



久我の言葉通り、A達は沢山の注文に追いつかなくなってきている。


「……そろそろ来る頃だな…」

しかしAも先読みをしていない筈がない。
強力な助っ人がいるのだ。





時は少し遡る。

この日は、ゆきひらに明かりがついていた。



覗けば、美作がAの真似をしていた…



「私は幸平A…」

「久我先輩にギャフンと言わせる為、頑張るよ！」

「おあがりよっ！」



美作の周到なる追跡(パーフェクトトレース)は、イメトレが大切。

イメージをする事で、作業効率をあげる。そしてそれはトレース相手の環境に可能な限り近付けるのがベストである。



だから、Aからゆきひらの鍵を借りてイメトレに励んでいたのである。








「私の方が先輩より、10年ほど先輩ですよ」

真似をした美作に、Aは呆れ顔。

「そういうのいいから早くして」


茶番を終えた所で。





「さぁて…一気に食い破るぞ、久我飯店！」




ひ弱だった子猫は初日の大敗からたったの二晩で、獰猛な獅子へと変化を遂げた──




「昨日渡したレシピはちゃーんと頭に入れてきた？」


「周到なる追跡をなめてもらっちゃ困るなァ…今日までのイメージトレーニングの成果を披露してやるぜェ」


「よし…んじゃあとっとと…」









「追い上げだ!!!」

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