【文スト】花が咲く頃に。【太宰治】 (ページ44)

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遠くから声がした。
太宰さんだ。

太宰「A～！」

2年の月日が流れた今、昔とは幾つか変わった点がある。

先ず、太宰さんが私のことを名前で呼ぶ様になったこと。

『どうしました、太宰さん』

太宰「もう、A、私の事は太宰さんじゃあ無いだろう？」

二番目に、太宰さんが私に凄く甘くなったこと。

『…お、治…さん…』

太宰「さん、も敬語も要らないのに」

『…おさ、治…』

未だ此の呼び方は慣れない。

ッと云うか治、と呼べと云われたのは太宰さん曰く、〝何故中也、と呼ぶのに私は太宰さん、と他人行儀に呼ぶんだ〟だそうだ。

敬語を外せ、と云われたのは恐らく歳が二つしか変わらないからだろう。

太宰「うふふ、可愛い。流石私のAだ」

といいつつ抱き締めて来る治…は随分と性格が変わったのか、はたまた唯優しくなっただけなのかは私には分からない。

『…そう云えば治、中也見てない？

此の書類を渡したいんだけど…何処にも居ないの』

三番目に、中原さん、が中也、となったこと。

中也、と名を出すとあからさまに治はムッ、と顔が引きつった。

太宰「私より、中也が良いのかい」

今の治からの言動からしてーー嫉妬、か。

『そう云う訳じゃなくて、書類を届けるだけだよ』

太宰「なら私が渡しておくよ。

…あの蛞蝓なんかに渡したら、君の手が腐っちゃうだろう？」

普通に失礼だよ、治…