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和夫くんの拳は空を切った。
そもそも本人が当てる気無かったんだろう、軽く殴ってくれとばかりに顔を差し出している。
「可哀想で見てらんねーよ」
ちらりと横に立つ三橋を見ると、得意げに笑っていた。マジで勝てると思ってんのかよ
案の定ボコボコにやられている和夫くん。仲裁に入った伊藤くんは刈り上げに謝ってからもう辞めるよう伝えていたがいきなり殴りかかられた刈り上げの怒りは収まらず伊藤くんを怒鳴りつけた。
瞬間、バキッというすごい音を立てて刈り上げは気を失い地面と熱いキスを交わす。
御愁傷様です
「大丈夫か和夫」
倒れている和夫くんに手を貸そうとした伊藤くんは完全に怯えられ避けられた。ツンツン頭が垂れ下がったように思う。
隣で渦巻くどす黒いオーラを無視しそんなことを考えていると、隣の三橋はジャンプして和夫くんの元へ行き蹴る。
お前は悪魔か
「テメー、この弱虫何負けてんだコラ！弟子失格じゃ」
「やめろヨー。ほら和夫くんこっちおいでー」
優しく手招きすればあら不思議
従兄弟の伊藤くんよりも頼りにされているようで腰辺りに捕まるとエグエグと嗚咽を漏らし泣き出した。
俺の制服で涙を拭いているのは些か気になるが、今回は許してやろう
「ベンチ座ろっか？」
コクン、と頷いた和夫くんの手を引き広場にあるベンチに座らせ蹴られたり転けたりで汚れた服を叩いて汚れを払う
泥は流石に落とせないか
「三橋の特訓じゃ強くなれないことが証明されたんだ。こっから俺のやり方でやらせてもらうぜ」
いつの間にか復活した伊藤くんが三橋を睨みながら言った
「ｹｯ勝手にしろヨ」
どかっとベンチに座り偉そーに踏ん反り返る三橋は不機嫌そのもので何かあれば邪魔してやるとばかりに2人をみて欠伸を一つする
こほんと一つ咳払いをし伊藤くんは男がなんたるかを語り出した。共感できるところもあればできれば共感したくないところまでバリエーション豊かなソレは漫画やドラマで語られる理想像のようだ。
実行出来るやつなんて、それこそ伊藤くんくらいだろう
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作成日時：2019年10月4日 23時
