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走ったからぐちゃぐちゃかも、と言い鞄から弁当箱を出すとあっという間に取られる。
パンの時と言い、食べ物に対する瞬発力が化け物じみてやがる

「うまっ!何これ」

「ウツボの唐揚げ」

「ウツボぉ?」

「爺ちゃんが海でとってきたやつ捌いたんだよ」

「何、この弁当お前が作ったの?」

「そうだけど?」

「げぇ!野郎の作った弁当かヨ!」

「いらねーなら返せ、俺も腹減ってんだからな」

「嫌だね!これはもう俺の!」

そういうと吸い込むようにして平らげてしまった。
本当に俺の分は残してくれなかったようだ

空っぽになった弁当箱を受け取り鞄にしまい、家に帰ったら爺さんになんて言い訳しようか考え込む
ゲンコツで済めば…まぁいい方だろう

「Aく〜ん?おーい?」

目の前で手をヒラヒラしながら顔を覗き込んでくる三橋。やべぇボーっとしてた

「なんだよ」

「帰んないの?」

「…帰る」

「じゃ、早く行こうぜ」

「なんで野朗と帰んなきゃいけねぇんだ…」

「うるへー!俺も嫌じゃ!」

「じゃあ1人で帰れよ」

「なっ…!この俺の優しさを無下にするとは…」

声が小さすぎて後半は何を言ってるか聞き取れない。ブツブツ文句を言いながらも待ってるあたり、マジで一緒に帰るみたいだ

「Aチャン此処からの帰り道わかんないだろ!」

「…そういえばここ何処だ」

「だから俺が…言わせんなバーカ!」

「…あぁそういう事ね、三橋くん意外に優しいトコあんのね」

「バーカ!バーカ!置いてくからな!」

「いってぇな!?石投げんじゃねーよ!」

走り出した三橋を追いかけてなんとか隣に並ぶ
さっきも思ったけど、コイツは足が早すぎる
やっと追いつき、ふと目に入ったモノ
思わず口元が歪む、悪い顔してるなぁ俺

「耳赤いけど?人に優しくするの慣れてなくて照れてるんですか〜?ウブだねぇ?」

「…本当お前嫌い」

「そりゃどうも」

そう言いながらも家まで送ってくれる
優しすぎて逆に怖かったのは胸にしまっておこう



あっ


遠くに見える背中へ叫ぶ

「さっきの弁当が今日の奢りってことでーー!!!」

何か怒鳴ってたが知らね、そのまま家に入った。

この後、玄関で待っていた爺さんに怒られ頭に大きなタンコブが出来たのは言うまでもないだろう。

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作成日時:2019年9月7日 1時

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