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5話 ページ5

「A、結婚しよ!」

護身用のナイフを手入れしながら、最早口癖になった言葉を彼は言った。

「しないって」

冷たく返しながら読んでいた本を閉じる。

シンは不満を口にしながら、僕に抱き着いた。

「あんたさ、俺以外を好きにならないでよ」

僕はそんな言葉にも耳を貸さない。

というか、何であの殺人鬼であるシンと同棲しているのかと言うと……

あの時_____



「ごめん。無理だ」

きっぱりと断った。

彼は途端に泣きそうな、哀しそうな表情になった。

「如何して……?俺が殺人鬼だから……?」

「違うよ」

確かにその部分も考え物だが、一番の理由は彼が不老不死であるという事。

例え僕が彼を愛したって、それはひと時の夢で終わってしまう。

だって彼は死ぬ事が無いのだから。

「君が僕と一緒に居ても、幸せになれない」

そう言うと、シンは驚いた。

「何で分かるの……」

僕は苦笑した。

「だって、何時か死ぬから。そしたらまた君に寂しい想いをさせちゃうだろ」

その言葉を聞き、彼の瞳から一筋の涙が零れた。

けれど、彼は扉の方に手を伸ばした。

すると、ガチャッと音がし、扉が開いた。

あ……と口から声が漏れた。

「俺の術で開かない様にしてた。でも、帰りたいんでしょ?俺の事は気にしなくて良いから」

彼を見ると、必死に笑顔を見せていた。

今にも溢れ出しそうな涙を堪えて。

僕は彼に近付き、彼がした様に触れるだけのキスをした。

そして、抱きしめた。とても強く。

腕の中で彼は震えていた。

置いていけないと思ったが、それでも一緒に居るのは間違ってると感じた。

「シン、君に逢えて良かった。さようなら」

僕は彼にお別れを告げ、古城を出た。

何度も何度も屋敷を振り返ったが、シンが姿を見せる事はなかった。

独りぼっちの殺人鬼の事を、僕は一生忘れないだろう。

彼を覚えていたい。そう強く思った。

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望月海(プロフ) - 瑠色さん» わざわざありがとうございます!探して読んでみますね (2018年9月27日 17時) (レス) id: e37311db21 (このIDを非表示/違反報告)
瑠色(プロフ) - 話題に出ているようなのでお節介に一言。 ルヴァンネさんという方の「人形師」というシリーズがありまして、人形師が主人公のことをずっと旅人さんと呼んでいるのです。 ホラーがお好きなら、おすすめの作品ですよ。 (2018年9月27日 16時) (携帯から) (レス) id: 04ea405d06 (このIDを非表示/違反報告)
望月海(プロフ) - てんてこまいのりーさん» その、ルヴァンネ?さんは存じ上げませんが、彼が主人公を旅人と呼んでる理由は、名前が分からず呼び方に困ったので、旅の者=旅人さんと呼ぶ事にしたのです。何か勘違いをさせたのなら申し訳ありません (2018年9月25日 21時) (レス) id: 9ce190e98a (このIDを非表示/違反報告)
てんてこまいのりー - とても描写や設定が上手く、面白いです…!殺人鬼くんにときめきました(笑)本当に申し訳ない事をお聞きします、旅人さんと呼ぶなど、何処かルヴァンネさんの作品に似ていますが、意図的なものでしょうか…? (2018年9月25日 20時) (レス) id: c26c235155 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - 望月海さん» そうなんですね!私の友達にも僕っ娘がいるので、なんだか親近感が湧きました笑 お答え頂きありがとうございます! (2018年9月25日 16時) (レス) id: 3a874cc5aa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:望月海 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年9月23日 15時

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