番外編2 独りぼっちの殺人鬼 ページ9
生まれた頃から、俺は独りだった。
周りの人達からは忌子、化け物と呼ばれた。
今でも如何してそう言われていたのか分からない。
ただ、その時は単に構って欲しい時期でもあった。
誰かと遊びたい。触れたい。心配されたい。愛されたい。
そう願ってしまった。
バケモノが愛されるわけないのに。
何度も泣いて、叫んで、縋って。
けど誰も振り向いてくれなかった。誰も助けてくれなかった。
そんな時、隣村で殺人事件が起こった。
犯人は捕まっておらず、俺の村の人も怯えていた。
見えない人物に怯えて、恐怖し、何時もそいつの事を考えていた。
俺は思った。俺も人を殺せば、皆は遊んでくれるんじゃないかと。
逃げる奴を追うのは、鬼ごっこ。
隠れた奴を探すのは、隠れんぼ。
ああ、良いな……♪
幼い俺が考え付いたものは、とても歪んだ考えだった。
それから俺は殺しを繰り返した。
バレない様に深夜の時間帯を選んで。
たまたま出会った悪魔と契約し、不老不死の力を手に入れた。
その後はもっと人を殺す為に、行動範囲を広げた。
証拠を隠す為に旅人ばかり襲ったり、一夜で一つの村を壊滅させたり。
俺から逃げ惑う人を見て、俺と遊んでくれてるって錯覚した。
歩いた道には死体が沢山転がった。
それすらも楽しくて。
けれど何百年も経った或る日、気付いた。
どれだけ人を殺したって、誰も愛してくれない事に。
俺は結局、独りぼっちだって事に。
俺は殺し以外に人と遊ぶ術なんて知らない。
独りは、嫌だなぁ……何時までこんな事を続けたら良いんだろう……
そんな想いを抱え、また殺す相手を探していた。
山道で出逢った旅人さんは、初めは普通の人間って思ってたけど、手厚い反撃を喰らって心に火が付いた。
絶対殺してやる……!そう決めたのに、俺は初めて人を殺せなかった。
Aが俺の求めているモノを与えてくれたから。
心配してくれた。笑って話し掛けてくれた。
そして、愛してくれた。
俺にはそれが嬉しくて、幸せだって感じれた。
同時に、人ってこんなに温かったんだ。
Aがキスして、抱きしめてくれた時は、別れるのが哀しい想いと胸がいっぱいの嬉しさが一緒になった。
だからこそ諦めきれなかった。
契約した悪魔を見つけ出して脅して、Aが死ぬ時に俺も死ぬ様にした。
そしてAに逢いに行った。
Aは俺を受け入れてくれて。
結婚しようとも言ってくれて。
何百年も生きて来た中で、今が一番幸せだ。
-fin-
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望月海(プロフ) - 瑠色さん» わざわざありがとうございます!探して読んでみますね (2018年9月27日 17時) (レス) id: e37311db21 (このIDを非表示/違反報告)
瑠色(プロフ) - 話題に出ているようなのでお節介に一言。
ルヴァンネさんという方の「人形師」というシリーズがありまして、人形師が主人公のことをずっと旅人さんと呼んでいるのです。
ホラーがお好きなら、おすすめの作品ですよ。 (2018年9月27日 16時) (携帯から) (レス) id: 04ea405d06 (このIDを非表示/違反報告)
望月海(プロフ) - てんてこまいのりーさん» その、ルヴァンネ?さんは存じ上げませんが、彼が主人公を旅人と呼んでる理由は、名前が分からず呼び方に困ったので、旅の者=旅人さんと呼ぶ事にしたのです。何か勘違いをさせたのなら申し訳ありません (2018年9月25日 21時) (レス) id: 9ce190e98a (このIDを非表示/違反報告)
てんてこまいのりー - とても描写や設定が上手く、面白いです…!殺人鬼くんにときめきました(笑)本当に申し訳ない事をお聞きします、旅人さんと呼ぶなど、何処かルヴァンネさんの作品に似ていますが、意図的なものでしょうか…? (2018年9月25日 20時) (レス) id: c26c235155 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - 望月海さん» そうなんですね!私の友達にも僕っ娘がいるので、なんだか親近感が湧きました笑 お答え頂きありがとうございます! (2018年9月25日 16時) (レス) id: 3a874cc5aa (このIDを非表示/違反報告)
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