殺人鬼と逃走劇

番外編6 元殺人鬼の花嫁 ページ13

雲一つない晴天の青空。

正直こんなに晴れるなんて思わなかったな。

「ねぇねぇ、もうこのネクタイ外して良い？あとボタンも。息苦しい」

隣でシンが駄々を捏ねる。

折角タキシードを着て決まってるのに、恰好がつかない。

苦笑しながらも、僕も着替えたいとは思っていた。

やっぱり普段着ない衣装は肩が凝る。

自分の着ているドレスを見ながら、息を吐く。

先程、シンとの結婚式を終え、今は控え室で休憩している。

場所は教会で行う事になり、予想以上の人が集まった。

本来は二人だけでするつもりが、ご婦人方に、

『一生に一度のシン君のタキシード姿を見たい』

とお願いされた。

それで急遽、大勢が結婚式に参加する事になった。

僕らは神の前で、永遠の愛を誓い合った。

あの時のシンの幸せ振りは一生忘れないだろう。

「今日から俺とAは夫婦かぁ」

ふふっ、と笑うシン。

「浮気だけはしないでね。されたら俺今度こそあんたを殺しちゃうかも」

と告げられ、それはないと言う。

「僕は君の事しか愛してないから」

シンは僕をぎゅうっと抱きしめ、キスをした。

「好き、好き。愛してる」

そう言うシンを見つめ、想った。

これからは、彼と愛し合って行くんだな。

シンはずっとそれを望んでいた。

僕が拒み続けて先延ばしに成っていたが、漸く叶ったんだ。

大事にしたいな。

愛し続けて居たい。僕の大切な人。

「シン。もう少ししたら、子供を作ろうか」

シンの紅い瞳が驚きに満ちた。

少しの間考えた末、シンは首を横に振った。

「やっぱり未だいいや」

「ん？何で？」

子作りしたいって言ってたのに。

シンは苦笑いを浮かべ、僕の手を握る。

「だってさ、赤ちゃんが出来たらその子にAを独り占めされて、俺は放ったらかしにされそうだから」

今は未だ二人だけで居たい。と言った。

シンは、嫉妬深い所がある。

そんな性格すら愛おしいと思ってるんだから、僕は相当彼に惚れてるんだ。

「もう二度と独りにはしないよ。だって旦那様だからね」

僕の言う事に、またシンは笑顔を見せた。

「A、凄く綺麗だよ」

突然の褒め言葉に、今度は僕が驚いた。

「今日が晴れで良かった。純白のドレスが輝いて見える」

シンはそう言うが、僕自身如何したら良いか分からず、顔に熱が集まる。

そんな僕を面白そうに見ていたシンだったが、再び僕を抱きしめた。

「A、ずっと幸せにすると約束するよ」

青空の下、そう告げられた。

-fin-

番外編7 サイコパスと何でも屋（前編）→←番外編5 不安からの愛を（後編）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す