【刀剣乱舞】子供の自分に嫉妬した【三日月宗近】 (ページ11)

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11話ページ11

貴方サイド

硬直したまま動けない僕を、三日月は静かに見つめて居た。

無表情なその顔は、一見機嫌が悪そうにも見えてしまう。

見下ろす瞳の中に浮かぶ三日月が、月の光を浴びて冷たく輝いていた。

薄暗いどんよりとした雲が垂れ込む様に、その場の空気はとても重苦しい。

音一つ聞こえない沈黙が続く中、漸く三日月が口を開く。

「話があって来た。中に入れてもらえるか？」

問いかけられているのに、有無を言わさない物言いに、僕は渋々三日月を部屋に入れた。

お互い向かい合って座る。

僕は成る可く三日月を見ない様、自分の服の端を見つめていた。

一体何しに来たんだろうか。僕は彼を怒らせる様な事をした覚えはない。

そもそも話すのも久し振りな気がする。

彼はずっと、幼い僕の面倒を見ていたから。

「あの、話ってなんですか」

思わず敬語になってしまったが、それ位三日月と顔を合わせるのは気まずかった。

「……お前は自分の事が嫌いなのか？」

一瞬、三日月の言った言葉が理解出来なかったが、直ぐに顕現された幼い自分の事だと悟った。

少しだけ視線を上げ、三日月を見ると、矢張り怒りを耐えた様な表情だった。

……結局、彼が心配してるのは僕じゃなく、彼女の方なのか。

また殺意に似た感情が湧く。

しかし三日月には悟られない為、必死に自分の感情を抑え込んだ。

「そんな訳ないじゃないか。同じ自分なのに」

咄嗟にそう言葉を紡ぐ。

「そうか？俺にはそうは見えないが」

喧嘩腰の三日月に、段々と僕も苛立って来た。

「何が言いたい訳？はっきり言ってよ」

思わず当たりが強くなってしまう。

「ならば何故、小さいのを睨むんだ？」

その言葉に、胸を突かれた。

三日月の言った言葉が否定できなかった。

嫉妬して、時に睨んでしまう事もあったから。

「お前には呆れた。もう少し小さいのに優しくしたらどうだ？」

次の瞬間、堪らず叫んだ。

「だったら僕の事なんて放っておけばいいだろ！？」

三日月の表情が驚愕に変わる。

「僕だって好きで彼女に敵意を向けてるわけじゃない！ただ君が……！」

そこまで言って口を噤む。

今ここで彼を責めて、何か変わるだろうか。

僕の中では、既に諦めの気持ちもあった。