朔間凛月 ページ1
貴方サイド
僕は窓から外の様子を見る。
ああ、やっぱり……
中庭には、あんずちゃんが木陰に座っていて、その膝には凛月が寝て居る。
またあんずちゃんに膝枕を強請ったのか……いいなぁ、あんずちゃんは。凛月に好かれてて。
僕は凛月の事が好きだけど、凛月は僕に冷たい。
もう、この恋は諦めるしかないのかな。
するといきなり肩を叩かれた。
見ると夏目が立っていた。
「こんな所でどうしたノ？」
僕は笑って、
「凛月のこと見てたんだ。凛月は僕に近付いて欲しく無いみたいだから、遠目で見てるんだ」
言ってて、変態みたいじゃないか、と疑問に思う。
そんな僕の心を見透かした様に、夏目は、
「好きな人に嫌われたくないって思ってるノ？」
僕は凛月を見ながら、
「うん。そうだね。冷たくても、ちゃんと話してくれるから。想いを告げたら、凛月は僕のこと、見てくれなくなる」
夏目は静かに聞いていたけど、やがて僕を抱きしめた。
「夏目……？」
驚いて夏目を見上げると、
「Aは、鈍感だネ」
意味が分からず首を傾げると、
「ボクの想いにちっとも気付いてくれなイ。ボクは君が好きだヨ」
思わず目を見開く。
「零兄さんの弟じゃなく、ボクを見てヨ」
そのまま夏目の顔が段々近付いて来た。
夏目の抱きしめる力が強くて振り払えない。
唇が触れ合いそうになった、その時、
「ねぇ、何してんの？」
何時になく低い声が聞こえ、振り向くと怖い顔をした凛月が立っていた。
「夏目、だっけ？さっさとAから離れてよ」
そう言うと凛月は僕の腕を掴んで歩き出した。
「ちょ……！？」
振り返ると、夏目が口パクで、頑張れと言っていた。
凛月は教室に来ると手を放した。
「凛月……」
おそるおそる声をかけると、凛月はゆっくり振り返って、
「あんた、夏目のことが好きなの？」
凛月に言われた言葉にぽかんとする。
僕の反応が面白かったのか、凛月は笑って、
「俺、Aが好きだよ」
そう告げられた。
「……え！？」
凛月は驚いている僕を抱きしめ、
「今度、俺以外の男に抱きしめられたら、許さないから」
そういう凛月に、僕は抱きしめ返した。
恋が実って、本当に良かった。
-fin-
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作者名：望月海 | 作成日時：2017年8月13日 14時
