彼と六人の友人たち １−１ ページ13
濱田side
夏のうだるような暑さが和らぎ、秋の気配を感じるようになったこの頃。
山の奥に建つ日本家屋、開け放たれた縁側と和室を隔てる襖。陽光が射し込むそこで、この家の家主である淳太が眠っていた。
無防備に眠り込む淳太からは、美味そうないい匂いがする。俺たち六人は人を喰わないけれど、そんな俺たちでも衝動的に噛みつきたくなるような、ひどく魅力的な匂いが。
小さく息を吐いて頭を振る。邪なことは考えるな。俺は、俺たちは此奴を守り抜くと誓ったんだ。
眠り込む淳太の隣に座り、まるい茶髪を撫でる。
何も被らず眠っている。このまま放っといたら風邪をひきそうだけど、そんなことにはならない。
愛する淳太に『風邪』なんて不幸が降りかかることを、座敷わらしである神ちゃんが許すわけがない。
あどけない寝顔で眠る淳太は、今年で十九歳になる。初めて会ったときより、ずいぶん大きくなった。それでも淳太の生きた年月は、俺たち妖怪の半分にもなりはしない。
だらだらと生きていただけだった二百年。
淳太を守るという意味を持って生きたこの十数年。
どちらか幸せで価値があるかなんてのは、考えるまでもない。
黄「…んぅ」
撫で続けていた淳太が瞼を開けた。ぱちぱちと瞬きをして、ぼんやりと俺を見る。
紫「おはよう、淳太。よう寝てたな」
黄「…濱ちゃん？」
ゆっくりと体を起こした淳太が俺に手を伸ばす。俺の着物に手が触れると、嬉しそうに微笑んだ。
黄「濱ちゃんやぁ…」
まだ覚醒しきっていない淳太はぽやぽやと笑う。出会った頃のように幼い仕草に、笑みが溢れた。
紫「そうや。こんなとこで何も被らずに寝てたらあかんで、風邪ひいてまう」
黄「あれ、寝たときはのんちゃんおったんやけど…」
行っちゃったかなぁ、と淳太は少し残念そうに言った。ぐっ、と伸びをして欠伸をする。
黄「そうや、村の人から美味しそうな西瓜貰ったんやった…皆呼んで一緒に食べよ、濱ちゃん」
そう言うなり台所へ向かった淳太の背中を追いかける。
どうかこの先も、愛する淳太に災いが降りかからないように。
俺たち妖怪と人間の淳太では寿命が違う。
それでも。
いつか来る別れまでは、こうして平和に笑っていたいから――
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嵐
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作者名：眞都 | 作成日時：2023年8月12日 16時
