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#030 籠の中-2 ページ32

太宰side

奴らは何時でてくるのだろう…と、

ビルの屋上からぼんやり眼下を

見下ろしていた時だ。

急に、切れていた筈の無線が繋がったのは。

ジュゥっと何かが焼ける音、

布を引き裂いたような、

悲鳴ーー

それらに混ざってジャラジャラと鎖が

擦れる音がした。


荒い呼吸、呻き、金属音

そしてーー男の嗤い声。


…拷 問、?


頭が熱くなって、目眩がする。

腹の中で蛇がのた打っているようだった。


珍しく冷静さを欠いた脳が殺せ、殺せと

指令を出す。

異能兵器なんてどうだっていい。

今ここでそれが発動し、横浜が消え去ろうと、

それで何万人が死のうと、

どうでもいい。

だが、彼女は、彼女だけは

ここで死んではならないのだ。

殺されてはならない。

自ら命を絶たねば。

そうでなくては。

そして、その時傍らに居るのはあの男でなく、

私なのだ。


狙いを定めた獣のように見張りの男に

近寄る。この時点では殺さない。

男の意識を奪い、手近な階段を探す。

嗚呼、丁度良いのが川縁にあるじゃないか

と、静かに笑う。

軽く頭を川に浸けてやり、意識を取り戻した

ところで先程の段差を噛ませた。

叫ぶ男の頭部を蹴りつけて顎を砕く。

私の何処にそんな力があったのか知らないが、

頭蓋骨まで割れたのではないかと言う程の

音がした。























『……………。』

足元に転がる複数の死体。

どれも胸部に1つ、弾を受けて絶命している。

織田作が居たらもう少し良かったかな、

と思いながら空になった弾倉を眺めた。


私は決して体術に長けている訳でも、

銃撃戦に長けている訳でもない。

故に、ある程度の傷を負っていた。

先程、弾がかすめた耳から

血が垂れたのを気にもとめず弾倉に

弾を込める。

『さて… 君が最後の一人だね。

Aの居場所は知って居るかい?』

男は言う。

「しら…ないッ…俺はただ、

見張っておけと言われただけで…や」

『そう』

男がそれ以上の言葉を紡ぐ事は無く、

パンッという音に全てかき消されて

やがて何も聞こえなくなった。








自身の、荒い呼吸だけが、

赤い路を満たしている。

#031 黒-1→←#029 籠の中-1



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置いときもの(プロフ) - 黒木宙さん» コメント有難うございます!更新頑張りますのでお待ちくださいね!!体調に気を付けます!笑 (2017年7月17日 18時) (レス) id: 001e2135c2 (このIDを非表示/違反報告)
黒木宙(プロフ) - 何時も楽しみにしています!次が待ち遠しいです笑体調には気を付けて頑張ってください! (2017年7月17日 18時) (レス) id: 0545e227ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:置いときもの | 作者ホームページ:http://user.nosv.org/p/oitokimono/  
作成日時:2017年6月15日 23時

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