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#028 抱懐 ページ30

Aside

嗚呼、憂鬱だ。

地下へと続く階段を、ゆっくりと降りていく。

大丈夫だ。と自分に言い聞かせる。

ここの構造は何度も調べた。構造だけを

言うのなら自宅よりも詳しい筈だ。


ここは一見港湾に建てられた倉庫のようだが、

人間一人分程の地下通路が用意されており、

其れが川上へと続いている。

通路には数百メートルごとに袋状の部屋が

用意されており、モニターに映る侵入者を

そこで向かい打つ事が出来る。

確実に異物を殲滅するその様はまるで

消化器官だ。

極めて侵入し辛いその形状の攻略に

ポートマフィアでさえも手を焼いていた。

「まるでウサギの巣だね。」

と無線越しに太宰の声がする。

『ウサギ?』

「おや、知らないかい?」

生まれてこの方仕事と自 殺にしか興味を

持った事がないのだ。

ウサギは長い耳を持つ草食動物だ

というくらいの知識があるだけで、

その生態なんて知るわけもない。

けれどそれを悟られるのが癪で。

『知ってる。』

と、すぐさま返事を返した。

「へぇ〜…そう。」

なにやら物言いたげな太宰を無視して歩く。

もう直ぐ一つ目の部屋だ。

そこには敵が待ち構えているだろう。

敵が追い詰められれば、きっと異能兵器

とやらを使う。それは避けねばならない。

「ウサギの巣穴はね、出入口が複数ある

らしいのだよ。尤も、私も実物は見たことが

ないのだけれど、ね。」

やっと太宰の思考に追いついた。

『もし、此処が消化器官型でなく、

ウサギの巣穴型だったとしたら…?』

「その可能性が高いよ。

Aはカメラを壊しつつ、隠し通路を

探して。私は地上から出口を抑える。」

『何処から出てくるかも解らないのに?』

「ねぇ、A。今まで私の行動予測が

外れたこと、あった?」


…否、だ。


私はそれに返事をする代わりに通信を切った。





"異能兵器"

首領も、私も、あの太宰でさえも、

その正体を知らない。

情報が、ない。

異能特務課ならば違うのかもしれないが、

生憎ツテも、ない。

どうしたものか、と溜息を吐いた時だった。





静寂を閃光が破った。




『手榴弾か。つくづく学ばない奴らだ。』

私に銃火器の類は効かないと

五年前に学ばなかったのか。


『学ばないのは、何方だ?』


爆ぜた小石が付けた小さな傷。

その傷に血が滲むのと同時に意識が途絶えた。




切った無線さえ繋ぐ暇もなく。

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置いときもの(プロフ) - 黒木宙さん» コメント有難うございます!更新頑張りますのでお待ちくださいね!!体調に気を付けます!笑 (2017年7月17日 18時) (レス) id: 001e2135c2 (このIDを非表示/違反報告)
黒木宙(プロフ) - 何時も楽しみにしています!次が待ち遠しいです笑体調には気を付けて頑張ってください! (2017年7月17日 18時) (レス) id: 0545e227ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:置いときもの | 作者ホームページ:http://user.nosv.org/p/oitokimono/  
作成日時:2017年6月15日 23時

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