#021 残業代は出ない ページ23
太宰side
積まれた紙の塔が姿を消したのは
空が白み始めた頃だった。
「よし、ひと段落した〜〜」
くああと欠伸をするA。
無理をさせてしまったかもしれない。
まあ、態々そうなるように仕組んだのは
自分なのだが。
この日の為にと数ヶ月前から仕事を溜め込み、
時間を作ったのだ。
朝を告げるように鳥が鳴いて居る。
明るい空と私を憎々しげに睨みながら
溜息を吐き、Aは備え付けの
シャワールームへと姿を消した。
このままこの部屋に居てもいいのだが、
鉄拳制裁を食らうことは分かっていたし、
バスローブ姿を見られない事よりも、
そのせいで数日間口を聞いてもらえない方が
よほど辛い。
私は渋々部屋を後にし、
山のような報告書達を提出しに行った。
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『入っていいかい?』
「いいよ」
バスローブから何時ものスーツに着替えた
Aが執務室の扉を開け、
私を招き入れてくれる。
無断で突入してもよかったのだが、今度は
万年筆では無くナイフが飛んできそうなので
やめた。彼女のことはからかいたいが、
嫌われたい訳では無い。
『6:30かあ…』
「おかげさまで。」
『幹部会議は7:00だねぇ。…サボる?』
「誰かさんと同じにしないで。出席します。」
彼女は時折 妙に真面目だから困る。
『意外に真面目だねぇ。じゃあ少し寝る?』
「起きられないから起きとく。」
『起こしてあげるのに。』
「ほんと!?」
『ウン。モチロンダヨ〜!』
勿論、起こすわけがない。
だが、Aにその判断をする気力と体力は
残されていなかったようだ。
起こさなかったとなるとまた怒るだろうが、
会議の内容は中也に聞けばいい。
彼の脳ミソでは内容を全て把握しているか、
怪しいけれど。
「じゃあそうしようかな」
私を疑いもせずに毛布を取り出し、ソファに
横になる。Aはよほど疲れていたのか
直ぐに寝息をたててはじめた。
「まったく…信頼してくれているのか、
警戒心すらないのか…」
おそらく後者だけれど。
始めはAの寝顔を凝視しながら
大人しくしていたが、
やがてそれにも飽きてくる。
暇を持て余して室内を彷徨った挙句、
私の目にとまったのは先程までそこに居た
Aのデスクだった。
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置いときもの(プロフ) - 黒木宙さん» コメント有難うございます!更新頑張りますのでお待ちくださいね!!体調に気を付けます!笑 (2017年7月17日 18時) (レス) id: 001e2135c2 (このIDを非表示/違反報告)
黒木宙(プロフ) - 何時も楽しみにしています!次が待ち遠しいです笑体調には気を付けて頑張ってください! (2017年7月17日 18時) (レス) id: 0545e227ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:置いときもの | 作者ホームページ:http://user.nosv.org/p/oitokimono/
作成日時:2017年6月15日 23時