検索窓
今日:17 hit、昨日:19 hit、合計:20,877 hit

#020 因みに ページ22

Aside

深夜、無駄に広い執務室に

カリカリという筆記音のみが響いていた。

山積みの資料やら報告書が大きな机を占領し、

五つの塔を築いている。丁度、

私達が拠点にする五つの巨大なビルのように。

若しこれが首領による遊び心だとしたら、

"ぶっ殺したい"

「物騒だねぇ。」

嗚呼、どうやら声に出してしまっていたのか。

部屋には私一人だった筈だが…。

手元にあった万年筆が声のした方をめがけて

飛んでいく。

其れは太宰の頬を掠め、背後の壁に突き刺さった。

「本当に物騒だ。」

『うせろ』

このままでは仕事が出来ないので、

机の引き出しから、スペアを出す。

時刻は深夜2時。

これから数日間しかない期限までの間に

これらを仕上げなければならないことを思うと

既に吐き気がしてくる。

なのに、睡眠不足の要因が目の前で笑っていれば

殺意くらい湧くだろう。

『何の用?』

「いやねぇ、忙しい新入りの為に

先輩が手伝ってあげようかと。」

『自分の仕事を終わらせに来たのでは無く?

貴方が自分の仕事をやってくれるなら

私もう帰れるんだけど。』

「えぇ〜〜?

仕事を覚える為にも必要な事だよぉ〜?」

太宰が妙に上機嫌だから腹がたつ。

「今夜は2人きりだねぇ」

『お前のせいでな。』

「つれないなぁ〜〜」

そう言いながらデスクに進入してくる。

太宰は積まれた書類を除け、

自身の作業スペースを作ると、

客人用の椅子を引っぱってきて私の隣に座った。

静かに仕事をこなし始める太宰。

一時間程したところでこの異様な雰囲気に

耐えられなくなり、

太宰をチラチラと盗み見てしまった。

「何?そんなに私の均整な顔が見たい?」

『はあ?』

「真逆…図星?」

『違う。』

違うが、まぁ…均整である事は否めない。

腹立たしいことに。

奴の顔はこれでもかという程、整っている。

モテるんだろうな。

この手のことになると最近は特に鬱屈とした気分に

させられる。おそらく恋愛経験が

一つもないからだろう。きっと。

『…。珈琲淹れてくる。太宰は?』

「欲しい。ついでに蟹缶と味の素も。」

『はいはい。』







私が部屋に備え付けの給仕場に向かう時、

太宰が穏やかに笑んでいたことを

私は知らない。

どのような気持ちで私を眺めていたのかも、

私の知ったことではない。

#021 残業代は出ない→←#019 マフィアの残業



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (24 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
42人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

置いときもの(プロフ) - 黒木宙さん» コメント有難うございます!更新頑張りますのでお待ちくださいね!!体調に気を付けます!笑 (2017年7月17日 18時) (レス) id: 001e2135c2 (このIDを非表示/違反報告)
黒木宙(プロフ) - 何時も楽しみにしています!次が待ち遠しいです笑体調には気を付けて頑張ってください! (2017年7月17日 18時) (レス) id: 0545e227ea (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:置いときもの | 作者ホームページ:http://user.nosv.org/p/oitokimono/  
作成日時:2017年6月15日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。