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#001 死にたがり-1 ページ3

太宰side






『何が幹部候補だ。…つまらないなぁ…』








川縁に腰を掛けた自身の眼前には

見張りの死体が転がっている。



全くもってパッとしない。



『情けないねぇ。銃も殆ど使われていない。』




私は小さく欠伸をすると、死体から離れて

気紛れに河へと近寄った。

何か面白いものでもないかとわずかに期待して。





河には黒い何かが浮かんでいた。





『広津さん…鳥かなぁ…?』

「其れにしては大きい気がしますが。」


どちらにせよここからでは見えませんな…と

広津さんは首をかしげた。



『一寸行って調べて来てよ。…いや、いい。

丁度 退屈してたんだ。私が行く。』



ふらりと立ち上がり、堤防に沿って歩く。



珍しいものを発見して胸が高鳴った。

庭先で珍しい昆虫を発見した時のように。


まあ、昆虫採取に興じたことは無かったから、

実際には判らないが。




川に近付くほど、

ぷかぷかと浮かぶソレがはっきりとしてきて

人の形をしていることが分かった。

『人だね。……死んでるかな?』

黒いコートの隙間から肌が覗く。

死体にしてはやけに肌の発色がいい。

『人形?』

人形にしては損傷が無さ過ぎる。


奇妙に思った私は

川から引き上げてみることにした。

黒いコートが水を含んでやけに重い。

ズルズルと引き上げ

(少々荒っぽかったかもしれないが)、


背中と脚を支えるように抱き上げる。



まだあたたかい?




…人間?


しかも生きている。



『広津さ〜〜ん見てよ!川に落ちてた。』

「太宰殿、元の場所にお戻し下さい!!

なにゆえ川に人など落ちて…」

そこで広津さんが黙る。

『どうしたの?広津さん。』

「其の方は…」

『え?知り合い?』



嗚呼、

私としたことが

顔を見るのを忘れていたらしい。

一旦川岸に寝かせ、顔を覗き込んだ。



『嗚呼、この子…

"幹部推薦を蹴った" あの子ぢゃないか。

元幹部候補が此処で

何をやってるんだろうねぇ…広津さん。』



一瞬浮かんだ驚きの表情はすぐに何処かへ

姿をくらます。


不意に水面がパシャリと波打つ。

鯉か何かが跳ねたのだろう。

其処には川縁の堤防に腰掛けながら笑む

自身の顔が映っていた。

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置いときもの(プロフ) - 黒木宙さん» コメント有難うございます!更新頑張りますのでお待ちくださいね!!体調に気を付けます!笑 (2017年7月17日 18時) (レス) id: 001e2135c2 (このIDを非表示/違反報告)
黒木宙(プロフ) - 何時も楽しみにしています!次が待ち遠しいです笑体調には気を付けて頑張ってください! (2017年7月17日 18時) (レス) id: 0545e227ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:置いときもの | 作者ホームページ:http://user.nosv.org/p/oitokimono/  
作成日時:2017年6月15日 23時

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