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#017 帽子-1 ページ19

Aside

幹部専用の執務室。

その部屋の一角に据えられた上等な椅子に

腰掛けて居るのはこの部屋の主人ではない。


「オィ、テメェら。」


どうやら相当鶏冠にきているらしい。

とはいえ、

反省する素振りすら見せないのが私達だ。

太宰も私も革張りのソファに腰掛け、怒り狂った

中原など、どこ吹く風でくつろいでいる。

「これはどういうことだ?」

そう言いながら投げて寄越された帽子。

嗚呼、そういうことか。

『ワタシぢゃアリマセン』

太宰の方をわざとらしく盗み見ながら

否定する。

「太宰。テメェか。」

相当なお気に入りだったらしく、

細かい生地に入り込んだ砂や泥を

洗い流そうとした跡すらあった。

まぁ、そのせいで余計に悪化したようだが。

言ってくれれば帽子くらい綺麗にするのに。

「というわけで、帽子を買いに行く。

付いて来い。」

こんな風に言っているが、

大事にかぶっているあたり、

捨てるつもりは無いのだろう。


だが太宰に何も償わせないのは癪だ、と。

嗚呼、太宰の所為で面倒が増えた。

この間の報告書も書かないといけないのに。

「え〜〜やだよ。」

太宰が間延びした声で答える。

一瞬、中原が意地悪く笑った。

「否、お前はいい。ろくなことにならねぇからな。

A、ついて来い。」

『「…はあ?」』

私が不満を訴える前に太宰が叫ぶ。

「なんでAなのさ!」

「アア"?別にいいだろ?"お前の事じゃねェんだ"

他人には興味なかったんじゃねェのか?太宰。」

太宰は少し沈黙した後、そうだったね。

と静かに言った。

『今直ぐ?

傷、まだ治ってないんだけど。』

毒は異能発動者が死んだからどうにかなったが、

腹の傷はまだ治りきっていない。

まあ、表面は塞がっているし、買い物くらい

行けないこともないが。

「ああ。今直ぐだ。」

その言葉と同時に太宰が顔をしかめたのを

私は見逃さなかった。


『太宰も本当は来たい…とか?』


「違う。」


そう言うと太宰は席を立ち、

自身のものである執務室を出て行ってしまった。


バタン


と扉が閉まる。









何故中原は太宰を苛立たせるような行動を

起こしたのだろうか。

常に飄々としている太宰が、こんな事に腹を

立てるのも不思議だ。


私には理解できない。




けれど、

扉と一緒に

太宰の心まで閉ざされてしまったような気がして。

其れが何より恐ろしくて。







気が付けば

私は、中原の静止を無視して走り出していた。

#018 帽子-2→←#016 汚濁-3



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置いときもの(プロフ) - 黒木宙さん» コメント有難うございます!更新頑張りますのでお待ちくださいね!!体調に気を付けます!笑 (2017年7月17日 18時) (レス) id: 001e2135c2 (このIDを非表示/違反報告)
黒木宙(プロフ) - 何時も楽しみにしています!次が待ち遠しいです笑体調には気を付けて頑張ってください! (2017年7月17日 18時) (レス) id: 0545e227ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:置いときもの | 作者ホームページ:http://user.nosv.org/p/oitokimono/  
作成日時:2017年6月15日 23時

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