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#015 汚濁-2 ページ17

中原side

「自分自身ですら奪えない命を

他人が奪えるわけ無いよ。」

奴のこの顔を見るのはこれが初めてだった。

今後、幾度と無く拝む事になる

死に焦がれる人間の顔だ。

奴は常に不愉快な男だが、今日は更に酷い。

『お前、真逆、死にてェのか?』

蓬髪に隠れて、目は見えなかった。

ただ口元は嘲笑するような、

困惑するような、

曖昧な笑みを浮かべて居た。

「そうかも、しれない。」



ビルを出て、歩き出す。

「手の込んだ陽動だ。あえて有用な駒を捨てる…」

『頭を捜せばいいんじゃねェのか?』

「その必要はない。もうじき来るさ。

私達が陽動に気付いたとなれば彼らは必ず

私達が首領の元に向かうと思うだろう。

それを待ち伏せし、殺そうとするだろうね。

首領と同時に相手をするのは

どう考えても分が悪い。

一人ずつ潰し、戦力を削ぎに来るだろう。

…こういう密集したビルの路地裏は

待ち伏せにもってこいだ。

50m先…あそこなんかいいだろうね。

詰め込めば50人は隠れられそうだy」

その言葉は銃声に掻き消された。

その弾丸は正確に太宰を狙っている。

俺が防ごうと、まあ…2、3発は当たる。

予想通り3発の弾丸が太宰をかすめたが、

太宰はそれを気にもとめず、

鋭い視線で敵を睨んで居た。

「牧羊犬が居たらそっちに頼むのだけど、

居ないから君に頼むよ。」

『オイ…一言多いな。』

「奴の異能は死体を操る異能ーー

あれはすこぶる厄介だ。まだ異能者の部下を

抱えているかもしれないから、

死体を残すわけにいかない。

"死体を丸ごと消す"必要がある。

そこでーー。

君があの時…

つまり、君が死にかけて暴走し、暴れまわりーー

部下諸共全滅させーー四つのビルを破壊し

首領が緊急事態だと私に電話してきて、

やっと出来た蟹鍋を食べ損ね、

夜中2時に私が不機嫌ながら出動した

あの夜のことなんだけど…」

『未だ根に持ってんのか。』

「君…アレと同じ事が今出来る?

勿論死ぬ前には止めてあげる。

問題は君が私の言葉を信じられるかどうかだ。

嫌だと言うなら他の方法を探す。」

少しの間の後、口を開いた。

『お前がそう言うって事は

今はソレしかないって事だろ?』

そう言いながら帽子と手袋、コートをまとめて

太宰に投げた。

『帽子だけはぜってェ汚すなよ』

「ああ。」

『汝、陰鬱なる汚濁の許容よ、

更めてわれを目覚ますことなかれ』


























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置いときもの(プロフ) - 黒木宙さん» コメント有難うございます!更新頑張りますのでお待ちくださいね!!体調に気を付けます!笑 (2017年7月17日 18時) (レス) id: 001e2135c2 (このIDを非表示/違反報告)
黒木宙(プロフ) - 何時も楽しみにしています!次が待ち遠しいです笑体調には気を付けて頑張ってください! (2017年7月17日 18時) (レス) id: 0545e227ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:置いときもの | 作者ホームページ:http://user.nosv.org/p/oitokimono/  
作成日時:2017年6月15日 23時

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