I Am Yours.(中)【伏見弓弦】 ページ31
弓弦くんと出会ったのは、2年になって初めてのテストが終了したときのことだった。
テストの成績で過去最悪な評価を叩き出し、いくつもの再試を控えた私が半分泣きながら学院近くの図書館で勉強していた、ある日の放課後のこと。
山盛りの参考書を抱え席につこうと歩いていたら、足を滑らせて思いっきりひっくり返ってしまった。
しかも、ただひっくり返ったわけではない。
空中で一回転をするという漫画みたいな奇跡を起こし、のみならず綺麗に着地までした。
何が起きたかわからずに、散らばった参考書の真ん中で、頭に大量のクエスチョンマークを浮かべながら汗だくになる私。そんなとき、後ろからクスリと小さな笑い声が聞こえてきた。
ばっと振り向くと、そこにいたのは一人の長身の男子。
すらりとして見えるけれど、鍛え上げられていることが分かる体躯。濃紺色のさらさらした短髪に、目元の泣きぼくろが色っぽい。
彼は紫水晶のような瞳をきゅっと細めて、私を見ていた。少しだけ三日月型にゆるんだ口元に、どきりと心臓が高鳴った。
固まる私に、彼はゆっくりと手を差し伸べる。
「お怪我はありませんか?」
いい終わったあと彼はまた吹き出したけど、その仕草がまるで王子様みたいにみえて。
私は見惚れたまま、しばらく固まってしまった。
「……お嬢様?」
「あ……あの」
「はい?」
「お名前、教えてくれませんかっ」
それが、弓弦くんとの出会いだった。
「……いやだから、なんども聞いたよその話。あんたが訳の分からない転び方して、知らない人に爆笑された恥ずかしい話でしょ?」
「知らない人じゃない!弓弦くん!!」
友達に弓弦くんとの出会いを話すのは、毎週といっても良いほどの恒例行事だ。
弓弦くんはアイドル科、私は普通科。つりあわない、無謀なのは分かっている。けれど、私は彼がすきなのだ。
数ヶ月間観察して得た、彼の魅力。知っているのは私だけ。
「……ストーカーで訴えられるよ」
「弓弦くんに訴えられるならそれでもいい」
「……」
うわあ、みたいな顔をする友人を尻目に、私は久しぶりに図書館に行こうと考えていた。
弓弦くんに初めてあった場所、思い出に浸りながら勉強すると捗る気がする。……なにより、今回も成績が酷い。
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誘宵(プロフ) - すみません!リクエストいいですか?できたらでいいんですけど(おともだーちー)の続きが見たいです! (2018年9月4日 18時) (レス) id: 5537d07d79 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - マイさん» リクエスト誠にありがとうございます。当方、伏見の小説をかいている途中なのでそのあとになりますが、よろしければかかせていただきます。 (2017年1月1日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
いーち(プロフ) - マイさん» はい、わかりました!ではその旨を伝えておきます。リクありがとうございました! (2017年1月1日 21時) (レス) id: 11ee66640a (このIDを非表示/違反報告)
マイ(プロフ) - いーちさん» あ、ごめんなさい!そー言う意味か。作者様の名前ですね!えぇ〜そうですね!まめだいふくもち様でお願いします!! (2017年1月1日 21時) (レス) id: dcde0ec6da (このIDを非表示/違反報告)
マイ(プロフ) - いーちさん» えーっと、とりあえず鉄虎君が出てきたらなんでもいいです!お願いします! (2017年1月1日 21時) (レス) id: dcde0ec6da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめだいふくもち/いーち x他1人 | 作者ホームページ:http://ない
作成日時:2016年8月12日 23時