なんなんですか。・中篇【葵ひなた】 ページ22
ここへ走ってくる二人の気迫と、会場の熱気でもう押しつぶされてしまいそうだ。
トラックに入って、手を後ろに出す。
隣の子の本気度がひしひしと伝わってきます。怖いぃ…。
足音がもうすぐ後ろに聞こえる。
と、同時に私の手に人肌で温められたバトンの感触。
しっかり握って、私は走りだした。
しかし、真横に隣の走者はいない。なんで?
カラン、と後ろで音がした。
どうやらバトンを落としてしまったようで、周りから野次が飛んでくる。
よっしゃぁぁ!
スポーツマンシップの欠片もないような感情が浮かんできたが、何はともあれ、無事に終われるかもしれないという希望が湧いてきた。
しかし、そんなものはすぐに打ち砕かれる。
ものすごい速さで私に追いついた隣の人は、私をすぐに抜き去っていった。
まぁそうですよね、現役陸上部に勝てるわけないですよね(泣)
当然すぎる力の差を見せつけられて、もう悲しくもなんともない。
そもそも勝算なんて元から欠片もないのだ。
そして、結果次の人にバトンを渡すまでには半周程差がついてしまっていた。
あれ、でも私の次の人って…。
「おい、次ひなただから最後まで頑張れー!」
自陣からの野次が飛んでくる。
そうだ、私の次は葵ひなたくん!もしかしたら、なんとかミスを取り返してくれるかもしれない。
前を見てみれば、バトンゾーンの最も手前で控えてくれているひなたくん。
私は最後の力を振り絞って、ひなたくんにバトンを渡す。
そうだ、名前を呼んでバトンパスしなければ。
「…ッ、ひなたくん!」
「…おっけー、見といてよ、一番で帰ってくるからさ。」
え、返事、してくれた?
そんなことを考えたときには、ひなたくんはもう走りだしていた。
一瞬、その様子に見惚れてしまった私だったが、次の走者が来ることを思い出してトラックの中へ入った。
汗が太陽を反射させて、なんだか彼がとてもきらきらして見えて、なんだか…。
それからはもう、早い早い。
一番で走っていた子も決して足が遅かったわけではないのに、ひなたくんは凄まじいスピードでその子を抜き去り、宣言通りトップで次の人にバトンを渡した。
***
ごめんなさぃぃ、あと一話だけ…。
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誘宵(プロフ) - すみません!リクエストいいですか?できたらでいいんですけど(おともだーちー)の続きが見たいです! (2018年9月4日 18時) (レス) id: 5537d07d79 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - マイさん» リクエスト誠にありがとうございます。当方、伏見の小説をかいている途中なのでそのあとになりますが、よろしければかかせていただきます。 (2017年1月1日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
いーち(プロフ) - マイさん» はい、わかりました!ではその旨を伝えておきます。リクありがとうございました! (2017年1月1日 21時) (レス) id: 11ee66640a (このIDを非表示/違反報告)
マイ(プロフ) - いーちさん» あ、ごめんなさい!そー言う意味か。作者様の名前ですね!えぇ〜そうですね!まめだいふくもち様でお願いします!! (2017年1月1日 21時) (レス) id: dcde0ec6da (このIDを非表示/違反報告)
マイ(プロフ) - いーちさん» えーっと、とりあえず鉄虎君が出てきたらなんでもいいです!お願いします! (2017年1月1日 21時) (レス) id: dcde0ec6da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめだいふくもち/いーち x他1人 | 作者ホームページ:http://ない
作成日時:2016年8月12日 23時