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吐くかと思った。
「何だこの胸クソ展開予想してねーぞ」
「壊せばいいだけの話だろう、アイツがとっとと、あれぐらいの墓を……くっ、壊せば……」
「伊黒が友情とプライドの狭間で揺れてる」
ヤバい。ヤバいなんてモンではない。まさかこんな土壇場(?)になってこんな激重お題を出してくるとは思わなかった、というのが彼らのもっとも正しい心境だ。柱の中でもっとも仲が悪い伊黒でさえ逡巡する程度だと言えば、他の柱の心情も説明できる。
ショックを受けている──のか定かではないAは、先程の言葉をぽつりと言った後、ぺたんと墓の前に座り込んでいる。そこから限りなく離れた隅っこで余裕を失った柱達が会議をしている、というのは、あまりお手本にならない姿だ。そうも言っていられないが。
「アレ、アイツが壊せると思うかァ?」
「……なんとも、と言った処でしょうか」
不死川の問いに、しのぶが眉根を寄せながら答える。彼女の脳裏には、あの墓石に泣いて縋るいつかのAがまだ焼き付いていた。Aがあの頃から変わっていない、とは断言しない。変わらないものはないし、彼女は変わることに頓着しないタチだ。
しかし死者への想いはどうか。死者が変わらないのは自明の理だ。例え何かが移ろっていたとしても、人間の目で確認できない以上、それは変化していないのと同じである──シュレディンガーもそう言っている。
「……、南無阿弥陀仏。彼女がどういう気持ちであれ、壊すべきだ」
「悲鳴嶼さん……」
「私達の命は私達のものでも、体はその限りではない。柱の体は柱のものではないのだ。お前達は、一体どれだけの屍を踏んで来た。……南無阿弥陀仏」
甘露寺が痛ましそうに顔を下に向ける。『命を背負っている』などという言葉ではなく、わざわざ『屍』と彼が言った意味もわかっているのだ。悲鳴嶼が涙を流すのはいつものことだが、甘露寺は痛ましそうな顔でAの方に目をやる。
煉獄が立ち上がった。
「A少女」
「────」
柱の誰が止める間もなく、墓石をじっと見つめているAの名を呼ぶ。
そして言った。
「やれ」
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なずな - 心臓が1億個ぐらいあってもたりませんでした!!助けてください!!(?) (3月29日 12時) (レス) @page50 id: f22ade9e4c (このIDを非表示/違反報告)
真白 - とても、面白かったです! (2023年1月27日 1時) (レス) @page50 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 一気読みしてたら、もう夜になってた⁉ (2023年1月27日 1時) (レス) @page50 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯殿 - 面白い続きが観たい… (2022年12月12日 10時) (レス) @page50 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
nori(プロフ) - 作者様の話好きすぎる…✨一気読みしちゃいました笑今更ですがお疲れ様です!作者様の作品これからいっぱい見てみようと思います!!! (2022年8月27日 21時) (レス) @page50 id: 415de435f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2021年1月9日 17時