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柱 「壊せ」 ページ44

リクエスト。
あはは! 少女ちゃんがIFルート並みにヒデェ目に遭ってる! あはは!(最低)


.


 風を感じる。



 此処は密閉されているハズなのに、ふわりと髪の毛が目を覆うような気がする。そして確かに、蝉の声が聞こえている気がする──いや、聞こえて、いたのだ。木々が騒めき、その喧騒の下で、誰一人来ないような場所で。

 居たのだ。


 確かに居たのだ。





 少年が、確かに此処で。





+ +




 何の変哲もない石だった。周りもまた、何処にでもありそうな風景を映しだしている──映しているだけで、四方を十メートルほど歩くと透明な壁にぶつかる。一番に被害に遭ったのは冨岡だった。

 ほとんど全員が怪訝そうな顔をしたし、すぐにソレに反応したのはたった一人だけである。その一人の反応を見て、ようやくもう二人も動揺を露わにしたワケだが──それでも、此処にいる他の者達は何が何だかわからない。普段ではない。通常ではない。白い部屋の中にいない。



 いの一番に様子がおかしくなったのは、Aである。それを見て、目を瞬かせ、ゆっくりと呼吸が止まっていくような表情をしていた。

 次にその反応を見て、煉獄が目を見開く。肝に直接冷や水を浴びせられたような感覚に、ぶわりと心底怖気が立った。この光景を見てか、彼女を見てかどうかはわからないが。

 最後にしのぶ。彼女が少なくとも一番冷静だっただろう。Aを見て、煉獄を見て、「そんな」と呟き声を漏らす。口に手を当てる表情は普段の様子ともっとも違ったが。


「……、おい、まずお題の確認をしようぜ」と宇随が言う。指さす方向に木札があり、



「【壊せ】──【ただしAが行うことに限る】」

「Aさんに関係してるの?」



 冨岡がお題をそのまま読み上げた。その呟きを拾った甘露寺が口元に可愛らしく指を添えて訊ねる。関係あることでは、あるのだろう。何せ彼女ともっとも付き合いの深い二人があれだけの反応をし、当の本人は先程から指先一つ動かしていない。

 煉獄が何かを説明しようとし、中途半端に口を開いた状態で固まる。愚直な彼にしては珍しく迷っているように見えた。「あの石のことだよな?」と宇随が確かめるように言うと、それについては顎を引く。



「────」



 小声でAが何かを言った。誰もが聞き取れなかった。





「──石じゃ、ない──墓、だ」

「墓? 誰の──」






「世界で一番大切な人」





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なずな - 心臓が1億個ぐらいあってもたりませんでした!!助けてください!!(?) (3月29日 12時) (レス) @page50 id: f22ade9e4c (このIDを非表示/違反報告)
真白 - とても、面白かったです! (2023年1月27日 1時) (レス) @page50 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 一気読みしてたら、もう夜になってた⁉ (2023年1月27日 1時) (レス) @page50 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯殿 - 面白い続きが観たい… (2022年12月12日 10時) (レス) @page50 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
nori(プロフ) - 作者様の話好きすぎる…✨一気読みしちゃいました笑今更ですがお疲れ様です!作者様の作品これからいっぱい見てみようと思います!!! (2022年8月27日 21時) (レス) @page50 id: 415de435f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2021年1月9日 17時

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