宇随、不死川、冨岡 「薬を飲め」 ページ35
リクエスト。
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先程から四人そろって、まんじりともせず部屋の中心にある薬を眺めていた。
その一つの錠剤だけが私達をこうさせている理由である──その薬の効能は大体の人間が身をもって知っているし、私もコレを飲むということになったら正直舌を噛み切りたいぐらいだ。しかも微妙にムカつく処が、今回この薬がたった一つだけなのである。
もし四つだとか人数分だったらもう少しやりようがあったものを……、とことんこの部屋の主は意地が悪いらしい。いや知ってたが、知ってて言っているんだが。
「──いや、だから俺が飲むって言ってんだろ?」
と、声を上げたのは宇随だった。先程からの宇随の主張は「自分が飲むべき」とのことだった。宇随は子供の頃から忍びとしての訓練を積まされていたから、この程度の薬どうってことないという判断からだろう。
しかしそれに反対しているのが不死川である。またもや「いや、冨岡に飲ませてやらァ」と言って首を縦に振らなかった。理由? 恐らくこの部屋は薬の効き目が出るまで扉を出現させないだろうし、だったら体が小さい冨岡が飲んだ方がすぐに出られる、ということらしい。
「じゃあ私が飲むわ」
「は? ダメに決まってんだろォがテメェの頭はゴミの塊か?」
「何でこの一言でそんなに罵倒されるの!?」
え!? 驚きなんだけど!?
だって不死川の理論で言ったら一番薬の効果が出やすいのは私だし。私なら特に薬に対する耐性があるワケでもないから──それなのにどうしてそんなにも反対されなきゃならないのか。
「とりあえずもう面倒くせェから冨岡に飲ませようぜ、それで片が付くだろォ」
「もう冨岡に飲ませたいだけじゃん……」
完全に嫌がらせと成り果てている。物凄い暴論を言い始めた不死川だが、冨岡は特に気にした風でもなく虚空を見つめていた。確かにこの部屋に四人でいるハズなのに、なぜかアイツの『ぼっち感』が凄まじい。ぼっちをマスターせしもの、という称号を送ってやろうかと真面目に考えた。
けれどこのままでは恐らく埒が明かなそうだったので、私は二人の目を盗んでひょいっと錠剤を取る。そのまま口に放り込み、「あ」という声が重なるのを聞いた。
その後記憶が飛んだ。
後日宇随には「お前もう一生ああいうの飲むな」と叩かれ、不死川には「俺の言うことを聞け」と怒鳴られ、冨岡には意味深な「…………」という憐れみのような沈黙と共に肩を叩かれるという散々な目に遭った。
私が一体何をしたと言うんだ。
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なずな - 心臓が1億個ぐらいあってもたりませんでした!!助けてください!!(?) (3月29日 12時) (レス) @page50 id: f22ade9e4c (このIDを非表示/違反報告)
真白 - とても、面白かったです! (2023年1月27日 1時) (レス) @page50 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 一気読みしてたら、もう夜になってた⁉ (2023年1月27日 1時) (レス) @page50 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯殿 - 面白い続きが観たい… (2022年12月12日 10時) (レス) @page50 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
nori(プロフ) - 作者様の話好きすぎる…✨一気読みしちゃいました笑今更ですがお疲れ様です!作者様の作品これからいっぱい見てみようと思います!!! (2022年8月27日 21時) (レス) @page50 id: 415de435f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2021年1月9日 17時