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何度か試した処
唇以外のものはカウントしないらしく、手、首、頬に(私が)試してみたのだけれど一つも『50』という数字に変化はなかった。口でキスしてようやく現在の『49』という数字になった。アラビア数字の場合パッと見でもわかりやすい。
しかしぐだぐだしていても仕方がない。ぐだぐだして許されるのはマスターと英霊だけだ、とっとと始めよう。
「じゃあ、ほら。座れよ玄弥」
「え?」
「五十回も立ったままするつもりか?」
「あ、あ……。すみません」
依然として顔は赤いままだが、ようやく現状を冷静に把握できるくらいの理性は戻ってきているらしい。元々玄弥は鬼殺隊の中でも頭の回転が速い方だと思うし、冷静ささえ失わなければ指揮官としても有能な人材だと思う。
まあ、コレは彼が狙撃を得意としているからなんだが。銃を扱う人間は風光や風力、対象の動いている速度を加味して計算しなければならないので、何となく頭が良さそうだと私は思っている。実際の処は知らね。ていうか個人によるだろ。
流石に玄弥にやらせるのは良心が痛む。一回り年下で、ほとんど私にとっても弟のようなものだから。……こんなことを言ったら、流石に不死川に怒られそうだけれど。
「いや、……いや、いいっすよ、俺がやります」
「んえ? 大丈夫」
「男が廃りますから」
……オヤオヤ、そうか。照れくさそうに言った玄弥に、私はほんのり頬が緩んでしまった。嬉しいことを言ってくれる。雛の成長を見届けた親鳥みたいな気分である。いや、彼が雛みたいに何もできないって言うワケじゃないけれど。それでも、そういうことを言ってくれるのは嬉しいものだ。
本当、良い子である──良い子だからこそ、不死川はあんなにも面倒臭いことをしているのだと思うけれど。そりゃあ、誰だって大切な人を死地に向かわせたくない──殉職率が五割を超える職場なんて、それはもう職場としての体を為していないのでは? とすら思う。
──さて、キスは唇にせねばカウントされないとわかったけれど、長さはどうなのだろう。
ということで、二人の息が続く限り唇を重ねてみる。既に三十秒近く経過したが、横目で見てもカウントは減っていないように見える。
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なずな - 心臓が1億個ぐらいあってもたりませんでした!!助けてください!!(?) (3月29日 12時) (レス) @page50 id: f22ade9e4c (このIDを非表示/違反報告)
真白 - とても、面白かったです! (2023年1月27日 1時) (レス) @page50 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 一気読みしてたら、もう夜になってた⁉ (2023年1月27日 1時) (レス) @page50 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯殿 - 面白い続きが観たい… (2022年12月12日 10時) (レス) @page50 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
nori(プロフ) - 作者様の話好きすぎる…✨一気読みしちゃいました笑今更ですがお疲れ様です!作者様の作品これからいっぱい見てみようと思います!!! (2022年8月27日 21時) (レス) @page50 id: 415de435f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2021年1月9日 17時