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悪趣味だと思った。
冨岡は、この部屋のことを──本心から悪趣味だと思った。
『──頑張ったんですね』
『……そ、うだ……、がん、ばった。頑張ったんだよ、私』
煉獄は、Aが鬼殺隊に入る前から彼女のことを知っていたらしい。映像の中にいる二人を助けたのも──いや、一人を助けたのも、彼らしい。冨岡はてっきりそれは彼女の師匠だと思っていたが違った。
彼は自ら命を絶ったのだそうだ。
自分の命と、Aの命を天秤にかけて──躊躇なく、Aの命を選んだそうだ。
『し、死にそう、だった。すごい痛かった』
映像の中で、Aの瞳にじわりと涙が滲み始めた。碧眼の少年はそれに寄り添うように心配した声を出す。それだけで水の膜の表面張力が決壊した。柱の誰が彼女を心配しても、こうはならないだろうと思った。
『だけど、どんだけ死にそうになっても、周りが死なせてくれなくて』
『恵まれましたね』
恵まれて、いたのだろうか。彼女は本当に恵まれていたのだろうか。
こんなにもボロボロで泣いている彼女は、本当に幸せなのだろうか？
『たくさん頑張ったのに、もう何もできなくて、死にたくなった』
『────』
『──頑張った！ そうだよ、頑張ったんだよ！！』
Aが初めて声を荒げた。
もう見ていられなくて俯いていた甘露寺がビクリと肩を揺らし、それに手を伸ばすかどうか迷っている伊黒の背中を宇随が強めに叩いた。バァン！ と強烈な音がして注目を集めた伊黒が宇随を睨み、息を吐く。
宇随はぼーっとしながら壁に凭れ掛かっている時透にも「座らねぇの」と声をかけた。時透は首を振ることだけを回答とする。
『けど、いないんだ。お前が、いないんだ。頑張った、頑張って、それでお前がいないんだ！！ 何で頑張らなきゃなんないんだ！ お前が、お前が生きててくれたら、もうそれだけでよかったのに！ ──それだけで、』
『────』
『なあ、このまま、此処にいよう？ 死んでもいいよ。一緒にいよう。名前があるんだ。師匠が私に名前を付けてくれたんだ。お前にもつけてやる。だから、』
『──ダメです』
そこで映像は終わった。
「……おら、出んぞー。シケた面してんじゃねぇよ、はい立った立った」
宇随が声をかけると、各々床に手を突いて立ち上がる。全員が全員、差異はあれど顔を顰めていたように見えた。
今度酒でも奢ってやろう、と思いながら、最後に宇随はスクリーンを見た。それから、──ふ、と笑む。
『とても、幸せな夢でした』
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なずな - 心臓が1億個ぐらいあってもたりませんでした！！助けてください！！（？） (3月29日 12時) (
レス) @page50 id: f22ade9e4c (このIDを非表示/違反報告)
真白 - とても、面白かったです！ (2023年1月27日 1時) (レス) @page50 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 一気読みしてたら、もう夜になってた⁉ (2023年1月27日 1時) (レス) @page50 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯殿 - 面白い続きが観たい… (2022年12月12日 10時) (レス) @page50 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
nori(プロフ) - 作者様の話好きすぎる…✨一気読みしちゃいました笑今更ですがお疲れ様です！作者様の作品これからいっぱい見てみようと思います！！！ (2022年8月27日 21時) (レス) @page50 id: 415de435f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白夜の世界
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時：2021年1月9日 17時
