熱中症 ページ42
大量のBBQグリルに炭を敷いて、火を付ける。
いい感じにあったかくなってきたら大量の野菜(捌くのがかなりめんどくさかった)とちょっといいお肉を網に並べる。
選手達はまだ体育館内で掃除と片付けをしているので外は平和だ。もう少ししたら肉食獣よろしく争奪戦が始まるのだろうけど…
清水「これで準備オッケー、かな」
紙コップと紙皿をテーブルにおいた潔子ちゃんは少し満足げに微笑んだ。
ゾロゾロとゾンビのごとくやってくる選手達に怯えるやっちゃんを宥めながら彼女はおにぎりのタッパーを開けた。
『あ、飲み物忘れてるかも。
私取りに行ってくるね』
何かが足りないことに気づいた私は、お肉の焼け具合などをみている他のマネージャー達に一声かけて食堂に向かう。
キッチンの奥にある巨大な冷蔵室にはたくさんのジュースやお茶が冷えている。
カウンターに数本取り出して、ボトルを何本入れても壊れないような頑丈な袋に詰めていく。
くるりと辺りを見回して、他に持っていくものがないかを確認した。
外からは声が、セミの鳴き声が、風の吹く音が聞こえるのに、食堂の中はなんだかうるさいほどの静寂が支配している。
聞こえるのに聞こえないみたいな不思議な感覚に陥り、これは良くないななんて人ごとに思う。
昨日日向くんがのぼせて倒れて自分も気をつけようと思ったのに。
どうも私は自覚してしまうと一気に症状が悪化するタイプらしく、動けずにカウンターに手をついてぼーっと立ち尽くす。
頭は正常に何をすべきか考えられるのに、体はそれに答えてくれないもどかしさ。
…力の入らない手でコップなんて持ったら落として割ってしまいそうだ。
息がどんどん浅くなっていて、そもそも息をしているなんてことに意識を持っていくと途端にどうすればいいか分からなくなっていくから…
こういう状況の時は、いつもタイミングが良くか悪くか誰かしら私のそばにいるものだからなぁ…
お肉が待っていて、試合後のおなか空いた時となればそりゃまぁ他校のマネージャーなんかに気を向ける人なんていないだろう。なんかこういうと、自意識過剰みたいだけど。
ズキズキしてきた頭を押さえて、とりあえず小さなボトルのスポドリを拝借して部屋に戻る。
できれば大ボトルを冷蔵庫に戻してから行きたかったのだが、なんだかそうも言ってられない。生温くなるであろう飲み物を犠牲に、私は鎮痛薬を取りに行った。
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作者名:あやにゃん | 作成日時:2019年4月16日 0時