落ち着かない ページ17
自室に案内され、とりあえず広いのにポツリと真ん中にある机の前に座る。
…ふむ…
落ち着かない。
後ろの方の箪笥に服を片付けている皐月さんを横目にぼーっとする。
そこそこ都心に近いはずのこの場所。
耳を澄ませればちょっと車の音も聞こえるものの、主に風や水の音しか聞こえない。
そろそろと外庭側の障子を開けて壁にもたれる。
上から直射日光を当てられている小川はキラキラと反射して、宝石が流れているよう。
皐月「何か飲まれますか?
この家にはエアコンがないそうですから、こまめに水分補給をしないと熱中症になりそうですね…」
確かに街中より涼しい風が吹いてくるとはいえ、じっとりと汗をかいている。
ーーーーーー
次の日の朝、5時に皐月さんに揺すり起こされる。
目を開けば前面に映る良い顔にギョッとするも、もう出発する時間か…と布団をめくる。
皐月「もうあんまり驚かないんですね。」
面白くないと言わんばかりの声色で皐月さんはそういった。
畳まれた布団の上に服をポンとおいた。
白のTシャツにカーキのハーフパンツ。
動きやすそうでありながらもちょっとした装飾がおしゃれ。
『いちいち驚いてたら心臓がいくつあっても足りなさそうですから。』
後ろを向いて荷物をチェックしている皐月さんにそういえば、クツクツと笑い声が聞こえてきた。
『そういえば、どうやって埼玉まで?』
まだ薄暗い廊下を忍び足で歩きながら聞いた。
向かっているのはおそらく車庫の方なので車で行くのだろう。
どんな車かは別に知りたくない。
皐月「もちろん車で、ですよ。
赤葦京治様も乗って行くことになっています。」
かちゃ…と小さな音がたち、扉が開かれる。
中には車高が低いオープンカーから大きなものまで数台の車が止まっている。
綺麗に整備されていて、泥はねの一つどころか指紋の一つさえ見当たらない。
皐月さんは白い手袋をはめて後部座席の扉を開けた。
私の荷物はすでに乗せられているようで、早く乗ってくださいと軽く表情で圧力をかけられた気がするも、いつもの笑顔を浮かべていた。
120人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あやにゃん | 作成日時:2019年4月16日 0時