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赤葦家当主 ページ16

ついこの間、不可抗力で来た赤葦家。
その日本家屋は明るいうちに見ると大きい。

広い庭の真ん中に立つ屋敷は平屋で、贅沢に面積を使っていることがうかがえる。
それだけ、昔からの影響力が強いのだろう。

左右には少し小さい建物が囲むように並ぶ。
いわゆる蔵というやつもある。


あぁ、お母さんはこの家から大学に通っていたのかと、広大な土地を見回して現実逃避をしたくなった。

隣に立つ皐月さんは苦笑いをして、背中に手を添えて進むように促した。
どうやら荷物はすでに運び込まれていったようだ。

おずおずと石が引かれた砂利道を進む。


篠原の家とは違う、いわゆる日本らしいこの家は庭も見事だった。
いわゆる枯山水庭園というやつで、美しく模様が描かれていて、今にも川が流れ出しそうな中にパッと明るいアジサイやどこか影のあるくすみブルーのそれらが佇んでいる。
等間隔に植えられていないそれらは庭師のセンスによって美しく見えているのだろう。
私が植えたらただただ、謎の空白がある庭になってしまいそうだなんて現実逃避をしてみる。

大きな玄関を通り過ぎ、奥の方へと案内される。
繊細な障子が貼られている部屋の前で案内をしてくれたお手伝いさんらしき人が恭しく中にいるであろうこの屋敷の主人に声を掛ける。

入る許可の声が聞こえると、何度か持ち替えて障子が押し開けられる。
それらの動作には一つも無駄な動きがない。


奥の方の座布団の上には夏に着物を着ているというのに暑さを感じさせない動作の美しい70ほどの女性がいる。
少しくすんだような藤色の着物には小さな模様が金などで描かれている。


「ようこそ、Aさん。
私は赤葦家当主、赤葦京華(きょうか)と申します。」


正面の座布団に座ったのちに彼女はゆっくりと頭を下げてそういった。

慌てて指をついて頭を下げ、名乗る。
家に遊びに来てくれたおばあちゃん、本人である。よく知っている。

でも、こんな着物を着て、和室の奥に座る彼女は見たことがない。
まるで双子の姉妹か、そっくりさんを見ている気分だ。




短く雑談をして、まぁ、家のように過ごしても良いが居間などではそれなりの振る舞いをするようにと念を押される。
…一応ちゃんと振舞っているつもりなのだがと思いながら、はい、とうなづいておいた。
 
 

落ち着かない→←東京



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作者名:あやにゃん | 作成日時:2019年4月16日 0時

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