忙しい ページ37
出された和食の朝ごはん。
雑穀米に焦げ目一つなく、でも綺麗な焼き色がついた塩じゃけ。
甘辛く煮てあるかぼちゃとお椀には豆腐のお味噌汁。
いつもよりちょっぴり豪華に感じる朝ごはんはお母さんの味とはまた少し違い、また違和感を感じた。
外で食べたり、ここで両親と一緒に食べたときには何も感じなかったのに。
おかずを一口ずつ食べて固まっていたら皐月さんが横から声をかけた。
いつものからかうような表情でなく、案ずる様なそんな顔。
皐月「どうかしましたか?」
私は小さく首を振った。
美味しい、それは間違いない。
きっと売り出せばお店はいっぱいになるだろうと思えるほどに。
『美味しいです、皐月さん』
うまく笑えているだろうか?
皐月さんの表情は未だ曇ったままだった。
ーーーーーー
あれから一週間が立った。
皐月さんには警戒心を教えられ(私は彼に”ノック”を習得させたが成功率は50%弱といったところだ)、部活ではあと3日でインハイ予選。
学校では勉学に勤しみ、家では皐月さんに家庭教師されて苦手科目を強化され、歩き方、言葉遣いなど色々と補正されていた。
そしてお父さんとお母さんは未だ帰ってきていなかった。
確かにお母さんはいつ帰ってくるとは明言していなかったが、連絡すら取れないほどに忙しいのだろうか?
お父さんに至っては慣れている。
よく何週間か帰ってこないことはよくあったのだが…事情を知ってしまった今は少し気になる。
部屋に一人でいると孤独に感じた。
学校では楽しく徹やひな、はじめにマッキー、まっつんそれに浅野ちゃんと喋れても、家に帰ってからは誰とも話せない。
彼女たちは学校には行けても終わったらすぐに家に縛られている様。
私も皐月さんに休みなく色々と教えられて、もちろん適度な休憩も入れてくれているけれど、精神的に摩耗してきていた。
ベットの上で体育座りをして膝に顔を埋めていると自然と涙が流れてきた。
拭う気力もなくなり腕を解いて後ろに倒れる。
マットは私の衝撃を吸収して沈む。
コンコン
控えめなノックがドアから聞こえた。
いつもはしないあの人が外で手をドアに当てていると思ったら少し笑えてきた。
ドアがゆっくり開けられて、皐月さんが私の顔を見るとギョッとしていた。
それもそうか、ベットの上で涙で顔を濡らしながら笑顔を浮かべている女なんておかしいに決まっている。
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あやにゃん(プロフ) - 紅葉さん» 一章と二章、どちらにもコメントくださって嬉しいです!(皐月さんは私の好みモロ出しにしてみました笑) そうですね、今作品のテーマは世界観や視点が変えられること、そして変えざるを得ないことでして…(でもやっぱり表現が少し大袈裟なので文章力が欲しいものです笑) (2020年6月2日 16時) (レス) id: 41b9de9ad7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - が、頑張れ篠原ちゃん……(その一言に尽きる)。皐月さんが好きです笑!世界観がどんどん広がっていくのがわかって楽しいです。 (2020年6月2日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやにゃん | 作成日時:2018年8月19日 8時