ド派手な継子 壱

拾肆話 全集中の呼吸 ページ15

「刀の使い方も覚えたし次は“全集中の呼吸(ぜんしゅうちゅうのこきゅう)”の習得だ。」

「全集中？」



師匠によるとなんでも全集中の呼吸は、著しく増強させた心肺により、一度に大量の酸素を血中に取り込むことで、瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる特殊な呼吸法らしい。




「いいか？腹に力入れろ。そんでもって腹式呼吸を永遠に続けろ」

「はい。……スーﾊｧ」

「息があせぇ！」

「ぐはっ！」


ちょっと息をしただけでお腹に強烈な殴打を食らわされた。

思わず朝ごはんが出てくるかと思った。





「限界まで吸って限界まで吐け。」

「はいっ！」




全集中の呼吸習得の訓練は今までの訓練と比べ物にならないほどキツかった。



「人喰い鬼と渡り合うほどの身体能力を呼吸で得た上で、そこから自分に合った“型”に沿った必殺の剣術を繰り出すことによって、岩塊よりも硬い頸を斬り落とすんだよ。」

「師匠はなんの呼吸を使うのですか？」

「音の呼吸だ。」

「派手派手ですか？」

「そりゃあもちろん派手派手だ。」




胸を張って威張る師匠を尻目に稽古を続ける。

私もやはり継子なのだから音の呼吸を使うのだろうか……



「まぁ自己流の呼吸を使う奴も結構いるがとりあえずお前は音の呼吸を使えるようになれ。」

「はい。」



その日から私の呼吸習得の地獄の日々が始まった。

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