弐拾玖話 ページ30
「よぉ、目が覚めたんだってな。」
「あっ、不死川先輩！交わりましょう！」
「……なんか久しぶりだなお前の変態発言はよぉ……」
目が覚めたAは後輩隊士と稽古をして胡蝶に怒られたと嘆いていたが、十割コイツが悪いので慰めはしない。
「なんか欲しいもんはねぇのかよ。」
「えっ？」
「誕生日。」
「あぁ、覚えててくれたんですね。じゃあ不死川先輩ください。」
「死ね。」
ほっといても二十歳になったら死にますよ。
そう言ってふんわりとAは笑う。
自分から言っておいてチクリと心臓が痛む。
「なんで俺なんだよ」
「？」
「お前ならお見合いしていい家柄の男を捕まえてそのまま所帯を持って幸せな人生が送れただろぉがよ……」
わざわざ自分に固執する必要はない。
こんな傷だらけで鬼とはいえ毎日命を奪って我ながら暴力的な自分より、こいつと合う男なんか探せばきっと見つかる。
―――――何故俺なんだ？
それがずっと疑問だった。
「不死川先輩だからなんです。」
Aは傷だらけな俺の手を握り話し始める。
繋がれた手を何故か俺は拒否できなかった。
否、何故かじゃない。理由はわかっていた。それでもその事実を俺は認めていないだけだった。
「昔の私って…ちょっと素行が悪かったじゃないですか。」
「ちょっとじゃねぇだろ……」
「少し黙っててください。家族も友人も鬼に殺されて復讐の意思だけで鬼狩りをしてた私に不死川先輩は愛を教えてくれたんです。」
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「下弦と戦ってる最中に刀が折れて戦意喪失してた私を先輩が助けてくれたんです。普段は暴力的かもしれないけど私を庇って戦う先輩は力強くて凄く綺麗だったんです。」
「………」
「まぁ、そのあと先輩にも怒られて刀鍛冶さんと育手にも起こられたんですけどね……」
確かに助けたあとは貧弱やら雑魚隊士など罵った記憶がある。
「そのあと柱になって愛柱として復讐心に囚われず愛を与えることにしたんです。育手がよくいってたんです。愛は必ず返ってくるって。」
少し肌寒いこの時期。
ただ繋いだこの手は温かかった。
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るる - 読んでて勝手に涙が出るくらい素敵な作品です。涙が止まりません… (2022年8月25日 23時) (
レス) @page45 id: a731806c24 (このIDを非表示/違反報告)
零流 - 涙が止まらないです… (2020年5月28日 11時) (レス) id: 5357f72739 (このIDを非表示/違反報告)
舞 - 色んな作品を毎回楽しませてもらってます！本当にお上手ですね！今回は悲しくて涙が出てしまいました…他の作品も楽しみにしています！ (2020年4月4日 1時) (レス) id: 536eb77c6b (このIDを非表示/違反報告)
遥 - いいお話です。涙が出ました‥ (2020年3月26日 11時) (レス) id: 89c9ae8a6f (このIDを非表示/違反報告)
なななななな - 今年初めてガチ泣きしました… (2020年3月2日 11時) (レス) id: 967fb8e362 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：AOI 3
| 作成日時：2019年9月21日 14時
