26話 練習にて ページ27
「――――――!」
「はい、いったん休憩!」
最後のシーンまでなんとか練習することができた。
僕は案の定主役を任されておりセリフも多く大変だった。
端の方で水を飲んでいればそこそこ仲が良いクラスメートが話しかけてくる。
「どうしたんだよA。元々上手いけど更に演技に磨きがかかってるじゃん。」
「まぁ、最近心境の変化があったんだよ。」
これが演劇科でする最後の演技なんだから嫌でも本気で挑むつもりだ。
翠(と、その他大勢の仲間たち)が見に来るんだから最高の演技を披露しなくてはいけない。
「だってこれが終わったら僕はアイドルやしなぁ……………」
独り言を呟いてもう一度最後の公演の台本を読み直す。
するとレッスン室の外は人が集まっているのかがやがやと騒がしい。
「またかぁ……」
「また?」
「気づいてねぇのか?お前また最近人気が上がってきたんだよ。………ほら。」
彼がスマホの画面を此方に向けてくる。台本から目を外して画面を見ればそこには前回の公演の写真が夢ノ咲のホームページに載せられていた。
「夢ノ咲のホームページってほとんどアイドル科の写真が載せてあるんだけどいきなりお前の写真が載せられ結構話題になってんだぜ」
彼がTw〇tterの画面を見せてくる。
“誰このイケメン?アイドル科じゃないの??”
“演劇科にいるからいつでも会えるじゃん”
“推し確定”
“アイドになることを勧めるわぁ”
“もっと写真ないの!?”
「みんなお前のことを“演劇科のアイドル”だってさ」
「……学園だけの呼び名じゃなくなったな。」
「どう?めちゃめちゃ有名人になった気分は?」
「…………不愉快かな。勝手に人の写真を見て盛り上がって鬱陶しい。」
本音を溢せば目の前の彼は目を丸くして驚いていた。彼の前ではいつも猫を被っていたせいか僕の発言が意外だったのだろう。
「意外だな。お前そんなこと言うんだ。」
どうせ公演が終わればもう関わることはない。
だから優しい橘Aを演じなくていいと思い彼からの非難の言葉を待っていれば、自分の予想と彼の言葉は違った。
「いつもの無害なAよりそっちの口が悪いAの方が全然良いと思う。なんか人間っぽい。」
「………引かないんだ。」
「むしろいつもの爽やかすぎなお前に引いてるよ。」
そう言うと彼は水を買いに行ってしまった。
………アイドル科に行っても彼とは仲良くしよう……
797人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
む(プロフ) - ほんとに好きです… (2022年6月4日 10時) (レス) id: 0d837f5408 (このIDを非表示/違反報告)
マロン - 凄い面白くて語源力があって羨ましいです!更新頑張ってください! (2020年4月11日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
更夜&ルナ@歌い手(プロフ) - AOI3さん» 了解です!頑張ります! (2020年4月9日 19時) (レス) id: b1f570929b (このIDを非表示/違反報告)
AOI3(プロフ) - 更夜&ルナ@歌い手さん» コメントありがとうございます。返信遅れてすみません!イメ画の件はぜひ!描いてくださると嬉しいですヽ(*´∀`)ノ (2020年4月6日 15時) (レス) id: e5bf353bab (このIDを非表示/違反報告)
更夜&ルナ@歌い手(プロフ) - すごく面白い作品ですね!応援してます!ついでとは何ですが夢主さんのイメ画を描いてもいいでしょうか?下手ですけど。 (2020年3月22日 20時) (レス) id: b1f570929b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:AOI 3 | 作成日時:2019年8月7日 14時