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声を掛けてきたのは茶髪のセミロング。
ヒールの高いブーツを履いていて、大人のお姉さん、といった感じの人だ。

「え?緑川。なんでここに?」

緑川、とキヨが読んだ女の人は私のことを見て、首を傾げた。

「友達と来てんの。その子は?妹?」
「彼女」

キヨがそう返すと、女の人は一瞬唖然とした顔をしたが、数秒後には腹を抱えて笑いだした。

「キヨ、あんた大人の女が好みだー、なんて言ってなかった?あはははっ。なるほどねー。ほんとはこういうのがいいんだ」

こういうのって…。確かにちんちくりんかもしれないけれど。
キヨの様子をチラっと見ると、「要らんこと言うんじゃねえよ!」と顔を赤くしていた。

「はいはい。あー、おっかしいの。じゃあね」

その人はヒラヒラと手を振ってあっさりと友達のところへかけて行った。
その後ろ姿をぼうっと見つめていると、彼女の友達らしき人物と目が合った。
違う。見ているのは私じゃない。
…キヨだ。

「……」

先ほどの女の人と同じ茶髪に切り揃えられたショートカット。
気の強そうな女性だった。
彼女は私の視線に気づいたのか、にっこりと微笑んだ。

「…!」

私としては一瞬のことのように思えたのだが、キヨが「A、おーい?」と顔の前で手をかざされて、ようやく我に返った。

「大丈夫か。気分悪くなった?」
「う、ううん。なんでもない。さっきの人は?大学の人?」
「そう。緑川巡って言うんだけど、面はあんなだけどすげー良い奴」

みどりかわめぐり。
言い難い名前だな、と口の中で反芻する。

「そ、その人の隣にいた人は…?」
「え?知らないけど…」

キヨは知らないのか。良かった。

「そ、そっか」
「嫉妬した?」
「そう何度も嫉妬しません」
「ちぇっ」

**

「冬休みだあ!!」

千歌ちゃんが放課後、生き生きと私の机にお弁当を置いた。
午前授業が終わり、部活にも入っていない私たちは、昼ごはんを学校で食べて、このまま本屋に行く予定だ。

「A、冬休みいつなら空いてるって?」
「あ、27と28は大丈夫」
「じゃあ27だね!カラオケ前集合でいいよね?」
「うん、大丈夫」

千歌ちゃんはにっこりと笑って、お弁当を広げ始めた。

「で?なんで私の親友はそんな辛気臭い顔をしているんでしょうか」
「…う」

気づかれていた。
そんなに顔に出るタイプなのだろうか。

私はぽつりぽつりと、日曜日にあったことを話し始めた。

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作者名: | 作成日時:2019年12月26日 12時

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