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どんっと勢いよく机にカルピスが置かれる。

「で?」

結局千歌ちゃんが納得してくれそうな言い訳を考えることは出来なかった。
とりあえず何かを発さなければならない。

「えーと…その、ですね」
「別に言いたくないなら強制はしないよ?でもね、大学生の彼氏ってやっぱり多少は心配してしまうというか…」
「大丈夫だよ!キヨはすごく優しくて頼りになって…と、とにかく千歌ちゃんが心配するようなことは何も無いから…!」
「そっか。Aがそこまで断言するなら大丈夫だね。で、そのキヨさん?イケメン?」

物凄くニヤついた顔で楽しそうに訊いてきた。

「イケメン…?なのかな、うん」
「写真ないの?」
「あったっけ……あ」

(タルトを作った時に撮ったツーショットが保存してあるな…)

「これはあるな!見せて見せて」
「分かった、分かったから…」

スマホを開いて千歌ちゃんに渡す。
その瞬間、「ぇぇえええ!」という大きな声が部屋に響き渡った。

「この人中学同じだったよ!こんな髪真っ赤ではなかったけど…かなり目立ってたから覚えてる」
「そうなんだ」
「そうなんだって…というかこの人めちゃくちゃ陽キャじゃん。Aと何が合ったの…」
「あはは…ゲームとか…」
「むー…A何かあったら私を呼ぶんだよ?分かった?」
「心配性だなあ…ありがとう」

**

11月25日。

この前の駅で私はキヨを待っていた。
そう。今日は西国無双の発売日。
今日のことを千歌ちゃんに話せば、「お昼からでしょ?私の家おいで。服とかメイクとかやってあげる」と言ってくれた。
正直お洒落と全く無縁だったから千歌ちゃんの申し出は本当に有難かった。

「A!ごめん。待った?」
「ううん。今来たとこ」
「そっか。てか今日どしたの」

どしたの、とは服装のこと?メイクのこと?
もしかしてキヨの好みじゃないのか…。

「変、かな」
「いや可愛いけど。いつもメイクとかあんまりしないじゃん」
「その、友達にしてもらって…」
「へー。趣味いいなその友達」
「キヨのこと話したら同じ中学だったって」
「同中?ま、とりあえず歩こうぜ。突っ立ってても仕方ないし」

なんの迷いもなく繋がれた手。
好きの二文字も言葉で言ってくれなかったくせにこういう行動はどうして恥ずかしがらないんだろう。
不思議でならない。

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作者名: | 作成日時:2019年12月26日 12時

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