世界で一番愛する人 ページ5
辛くて苦しくて、悲しくて悔しい思いも沢山してきた。何度も泣いたし、挫けそうになったし、もうここで逃げてしまいたいと思うことだってあった。なんで私はここに居るんだろうと、無力感に苛まれたり、早く強くならなきゃと、焦燥感に駆られたり。繰り返し繰り返しそういうことを目の当たりにして、どうすればいいのか分からなくなってうずくまったりして。それでも立ち上がれたのは、沖田隊長が居たからだ。彼の存在があったからだ。彼が、何があったって隣に居てくれたからだ。彼が居たから、私は一人にはならなかった。立ち上がる勇気を貰えた。彼が私の隣で、私の名前を呼んでくれていたから、前に進むことができた。彼は歩幅を合わせて、一緒に歩いてくれたから。
そのすべてが、沖田隊長と過ごしてきたその日々が、私の中で宝物になっていった。嬉しかったことも、悲しかったことも、幸せだったことも、同じように大事な記憶となった。そしてその宝物を、記憶を、これからも増やしていきたいと、そう思うのだ。彼が隣に居てくれるのなら、どんなことだって乗り越えて、最後の最後では隣り合って笑っていられると、そう思うのだ。純粋に信じられるのだ。
沖田隊長が居なければ、私だけが生きているだけでは、それは不可能で。宝物を増やしていくことなんて出来はしなくて。
沖田隊長がどれだけ、私を真っ直ぐに想ってくれていて、どれだけ私に生きていてほしくたって、自分の身を呈してでも護りたいと思ってくれていたのだとしたって。
それでは、意味をなさないのだ。沖田隊長の居ない世界なんて、ただの空っぽの箱のでしかない。私はそんな空っぽなところには居たくはない。
彼が隣に居て。幸せなことも悲しいことも彼の隣で受け止めることができたなら、それがどんな淀んだ色をしていたって、最後にはその色すら、愛しく思える。空っぽな世界は、たったそれだけのことで、色を持ち、形を得るのだ。
これまでと同じように。私はこれからも、沖田隊長の隣に居たい。
もう、それだけしか重要ではない。それだけでいい。他のことなんてもう望まない。だから。
だから、ねぇ、
「…沖田隊長、」
起きてください、と。私はまどろんだ意識の中で、小さく呟いた。そう呟いたのが現実の私なのか、夢の中の私なのか判別はつかない。けれど、その声を届けたい相手は同じだ。
ただ一人。世界で一番、愛する人に。
その時。
「…ッ!」
感じた。
彼の指が、ピクリと動いたのを。
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もち(プロフ) - 感動して1人で泣いてました😭😭とても引き込まれて気づいたら最後まで読んでました!!完結まで長かったですが素敵な小説書いてくれてありがとうございました!お疲れ様でした!😊😊 (2022年4月4日 14時) (レス) id: f64c573671 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - astrumlunaさん» astrumlunaさん!ありがとうございます!!最後まで読んでくださり嬉しいです!!私もこのお話の沖田隊長と夢主ちゃんはとても愛しいです(o^−^o) これからも二人は幸せになっていくんだと思います…!!素敵なコメントありがとうございました!! (2020年4月16日 12時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
astrumluna - この作品を見つけてから、一瞬で読み終わってしまいました!! 凄く引き込まれるお話で、沖田さんも夢主ちゃんも大好きです笑 最終話の“さぁ、今日も〜”という部分でこれからも幸せな日々が続いていく感じがしてとても好きです!! もっともっと2人の物語を読みたいです!! (2020年4月16日 12時) (レス) id: 67fd5c2fc4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 憐さん» 憐さん!ありがとうございます!お返事が遅れてしまってすみません…!一日で…!!長いのにありがとうございますぅぅ!!日下部さんは読者様から人気でとても嬉しく思います!(o^−^o) きゅんきゅんを目指したので沢山きゅんきゅんして頂けたなら大成功です! (2020年2月19日 16時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - yukakdonaldさん» yukakdonaldさん!ありがとうございます!お返事が遅れてしまい申し訳ありません!!番外編!久し振りに日下部さんを書きたいです…!!どんな風にしようかそろそろ考えてみようと思います!!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2020年2月19日 16時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2019年4月5日 21時