【銀魂】沖田隊長、おはようございます【沖田総悟】

コイツだけは　沖田side ページ28

入院していたところのナースステーションにも寄り「お世話になりました」とAが表に出ていた数人の看護師に向かって頭を下げ挨拶をしてから俺達はエレベーターに足を進めた。因みに挨拶をする際、Aは仁王立ちでボーッとしていた俺の後頭部に手を持っていったと思ったら「沖田隊長もちゃんと挨拶してください」とほぼ無理矢理お辞儀を俺にさせた。そんな俺達の様子に看護師はおかしそうにクスクス笑っており、俺は何とも言えない気持ちになった。まったく逞しくなったものだ。以前なら俺の後頭部を唐突にガッと手をやったりしなかったし、ていうか昨日なんか俺にデレデレだったくせに。昨日のあの可愛いとしか言えないAは何処に行ったのだろう。

退院の手続きやら何やらも早くから行った為か時間は掛からず、すぐに病院を出ることが出来た。体力を取り戻すために病院の敷地を散歩したりはしていたけれど、やはり退院となると外に出たときの解放感が違う。また病室に戻るということがないからだろうか。

風は春のにおいをしているものの夏の予感を漂わせていて、よく見ると空も春のそれよりも姿を変えているように思えた。そういうことにも目が向くようでなんとなく面白かった。


「もう春も終わりか」

「ですね、なんか瞬く間に終わっていっちゃいましたね」


入院している間に季節が流れていってしまって、なんだか自分だけ取り残されているような気がしてきてしまう。けれどAは俺の隣に並んでこちらを見据えて言う。「帰りましょう」と。他の何が俺を置いて行ったとしても、コイツだけは俺の隣に居てくれるんだろうな、なんてことをふと思った。


「そうだねィ…手ェ繋いで行くか」

「は！？な、何でですか」

「別にいいだろィ恋人なんだし。逆に繋がない理由が何処にあるんでィ？」


あるなら教えてほしーもんだー、と言ってやると返す言葉もなく黙り込んだAは、何故か辺りをキョロキョロと見回しては仕方ないなと言うように手を差し出した。


「…まぁ、退院祝いってことにしておいてあげます」

「そりゃどうも」


少し拗ねたようにそう言うAがやはり可愛くて、口角を上げてしまいながらその手を取った。昨日も今日も相変わらず、Aは可愛いとしか言いようがない。

指を絡めてみても「そう来るのか！」という表情をしつつもクレームを言ってこないのでこのままで行こうと思う。


どちらからともなく歩き出す。なんとなく手を繋いでいる方の腕を大きく振ってみると「やめてください恥ずかしい」と言われてしまった。

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