【銀魂】沖田隊長、おはようございます【沖田総悟】

気持ちが大事　沖田side ページ27

沖田side


「あれもあるしこれもある…忘れ物はないですよね？」

「ないんじゃねェの、多分」

「多分じゃダメなんですよ！忘れ物なんかしたら病院の方にご迷惑をかけることになるでしょう、完璧にして帰らなければいけないんです！！」


窓の外から見える空は雲ひとつなく、なんてことはないけれどよく晴れていた。ところどころ薄く引き伸ばされたような雲が浮かんでおり、その水色を透かせて見せていた。雲なんて見当たらず、ただただ青いだけの空は清々しくていいけれど、薄い白の向こうから見える青色も嫌いじゃない。そこに理由は特にないけれど。直感でそう思うだけだけれど、そんなことにいちいち細かい理屈は必要ないだろう。そんなことより、今は一ヶ月ほど世話になったこの病室に忘れ物がないかを確認することの方が重要であった。

退院当日。雨なんか降ってきたらどうしてやろうか、取り敢えず土方の野郎の首にロープを巻き付けて縁側に吊し上げ、てるてる坊主にしてやろうかと思っていたのだけれど、そんな必要もなく。お日柄もよく退院日和であった。

あまり中途半端に遅い時間に出ると病院も混むだろうと、午前中から病室にやって来たAはせっせと俺の荷物を大きめの鞄に詰め込んでいた。病室に備え付けられている棚の中やベットの下、テレビ台の引き出しの中などをくまなく確認し、漸くソイツは「よし」と呟いた。


「準備完了しました、沖田隊長」

「おう、んじゃあ行くか」

「そうですね」


もう少しここでぐうたらしていたかったけれどそんな訳にもいかず。それにあまり俺が屯所を留守にしているとAも寂しがるので潔く退院することにした訳だが、職業柄入院が初めてという訳でもないしむしろ何回か厄介になっているので病室に対して名残惜しさなんてものは皆無だ。

俺はAが手に持っていた荷物が入った鞄を半ば引ったくるように奪い肩に持ち手を引っ掻けるようにして持った。


「そんなに重くないですし私が持つのに」

「俺は手ぶらでお前がんなデカイ鞄持ってたらおかしいだろィ。自分の荷物だし」


でも、と更に食い下がるAを「いーからいーから」と制し、俺はもう取り合わないというようにさっさと病室をあとにした。Aは慌てたように俺の後を追ってきて、病室を出ようとしたときに思い出したように部屋に向かって「お世話になりました！」と頭を下げている。律儀な奴だ。


「病室はどういたしましてなんて言わねーぞ」

「気持ちが大事なんですよこういうのは」


あまりにもコイツらしくて笑ってしまった。

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