奇妙だ ページ24
「……へェ」
「何ですか、文句でもありますか」
「いいや?まったくねェよ?なんだコイツすげェ可愛いなと思ってただけでィ」
「…」
「あ〜抱きてェ〜」
「…もう、やめてくださぃぃ…」
情けない声でそう言いながら沖田隊長の胸板辺りに顔を埋める。本当にそうやってしみじみ言うのはやめてほしい。その前にそういうことを普通の音量で言うのをやめてほしい。というかそんな恥ずかしいことを言うのをやめてほしい。心臓が持たない。何処かに吹っ飛んでしまうのではないかというくらいに危険なレベルで持たない。バクバクバクバク…と早いリズムを刻みながら心臓は身体中に血液を忙しく回していく。頭が沸騰しているみたいに熱くなる。そんな私の後頭部にある彼の手のひらは、「いつまで経っても初だねィ」とまた私をからかう。
ムゥ、としつつも、私は顔を上げない。あまりに顔が熱いので上げたくなかった。けれど彼はそれを許してはくれないらしい。
「なァA、顔見して」
「…やです」
「拒否権なんてねーの。ほら」
「だって、またからかうんでしょ、こんな顔見たら」
「そりゃからかうだろィ、からかわないでどうすんでィ」
「…そんな当たり前だろみたいに言われても困ります」
さっきとはまた違う意味で、彼に顔を向けられない。それに、息をする度に沖田隊長のにおいがして、それが心地よかった。
キュ、と彼の着ている入院服を掴んで、あれ、なんか私変態みたいなこと考えてる?と思っていたとき。
突然する、と彼が私の耳に触れた。
「ひゃうっ」
ビクッと肩を揺らして、そんな声を出して、勢いで私は顔を上げてしまう。パチリと、私の耳を摘まんでいる彼と目が合う。沖田隊長はまた意地悪くニヤリとする。私は「またやられた」と顔を固める。
「お前やっぱり耳弱いんだねィ」
「や、やめてください…」
「え〜、どうしよっかな〜」
そう言いながら沖田隊長はつーっと、私の耳の縁に指先を滑らせた。「ん、ぅ…」なんて声が小さく漏れて、死ぬほど恥ずかしい。堪えられない。今すぐに何処か遠くの山奥に穴を掘って入りたい。
「だ、だめぇ…」
「…」
目にうっすらと涙が溜まっていくのを自覚していれば、す、と。彼の指が私の耳から離れていった。素直に彼が私の言うことを聞いてくれるのは奇妙だ。いや、助かったけれど、非常に奇妙で怖い。何があったのだろう。私はいつの間にか閉じていた目をゆっくりと開けて彼を見やる。すると。
沖田隊長が両手で自身の顔を覆っていた。
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もち(プロフ) - 感動して1人で泣いてました😭😭とても引き込まれて気づいたら最後まで読んでました!!完結まで長かったですが素敵な小説書いてくれてありがとうございました!お疲れ様でした!😊😊 (2022年4月4日 14時) (レス) id: f64c573671 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - astrumlunaさん» astrumlunaさん!ありがとうございます!!最後まで読んでくださり嬉しいです!!私もこのお話の沖田隊長と夢主ちゃんはとても愛しいです(o^−^o) これからも二人は幸せになっていくんだと思います…!!素敵なコメントありがとうございました!! (2020年4月16日 12時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
astrumluna - この作品を見つけてから、一瞬で読み終わってしまいました!! 凄く引き込まれるお話で、沖田さんも夢主ちゃんも大好きです笑 最終話の“さぁ、今日も〜”という部分でこれからも幸せな日々が続いていく感じがしてとても好きです!! もっともっと2人の物語を読みたいです!! (2020年4月16日 12時) (レス) id: 67fd5c2fc4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 憐さん» 憐さん!ありがとうございます!お返事が遅れてしまってすみません…!一日で…!!長いのにありがとうございますぅぅ!!日下部さんは読者様から人気でとても嬉しく思います!(o^−^o) きゅんきゅんを目指したので沢山きゅんきゅんして頂けたなら大成功です! (2020年2月19日 16時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - yukakdonaldさん» yukakdonaldさん!ありがとうございます!お返事が遅れてしまい申し訳ありません!!番外編!久し振りに日下部さんを書きたいです…!!どんな風にしようかそろそろ考えてみようと思います!!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2020年2月19日 16時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2019年4月5日 21時