【銀魂】沖田隊長、おはようございます【沖田総悟】

心を鬼にする ページ19

『痛いの痛いの、飛んでけ〜』


結果として私は沖田隊長が言った通りに痛いの痛いの飛んでけの呪文を唱えて、沖田隊長は『あ〜、ちょっと楽になってきたかも、もっかい』と、痛みに耐えながら小さく笑かけてくれたのだ。そんな子供だましなもので痛みが遠退く訳がないのに、それでも笑って見せてくれたのだ。そんな顔をされてしまったらやってあげない訳にもいかず、何回か私は同じ呪文を繰り返したのだ。彼の手のひらをギュッと握りながら。その度に彼は私を安心させるように『痛くなくなってきた』と言ってくれて。

…が。それが今ではこうしてからかいのネタとして扱われているのである。あの時は彼の身体にも本当に痛みがあったし、私は少しでも彼の力になりたくて必死だった。心の底から彼の痛みが落ち着いてほしかった。何でもいいから彼を支えてあげたかった。そうしたらほら、この様だ。


今では心の底から心外だしタンスに小指をぶつけるくらいのレベルで痛い思いをすればいいと思っている。多少泣けばいいと思っている。


「もう二度とやりませんからね！」

「そう怒ってんじゃねーや、定期的にやってほしい程には可愛かったぜィ」

「絶対にやりません！！」


まったく、人を馬鹿にして。こっちがどんなに心配で必死だったか、彼には想像もつかないのだ。私は眉を中心に寄せて不機嫌を遠慮なく醸し出しながら顔をそっぽに向ける。少しは反省してくれないと気が済まない。


「A」

「ごめんなさいって言わなきゃ許しませんから」

「俺がそう言われて謝ると思うかィ？」

「思わないので暫くは貴方の方を見ません！」


そう言ってやると、沖田隊長は静かになって、病室がシーンとした。もう退院前なので心電図などもないため本当に無音だ。少しだけ気まずい感じになる。それでもめげずに私は沖田隊長から顔を逸らし続ける。

すると、沖田隊長がベッドに寝転がっていた体勢から上半身を起こしたようで、布が擦れる音が微かに聞こえて、それから、私の服の袖がくいっと軽く引っ張られた。彼が私の服の袖を摘まんでいるのだ。


「なァA」

「……」

「こっち向けよ」


こんなときばっかそんな甘えた声を出さないでください！！！と内心で叫びながら赤くなってきているであろう顔を更に逸らす。若干首が限界を迎えつつある方向である。

これは明らかに彼の策略だ。甘ったれた声でそうやって言ったら私が観念すると思っているのだ。そんなのに引っ掛かって堪るもんか。そう思いながら心を鬼にする。

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