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月｢戦争だ！｣
ドクン、と心臓が動く感覚がする。ついに日露戦争が始まったのだ
かといって私が何か出来るわけでもない。強いて言うならばこの場で彼らを待つことだ
すでに遠くに見える月島の背中を見つめてしゃがみこむ
今から私はなにをするべきなんだ？
戦争に手出しは出来ない。下手すれば時代の流れまで変えてしまう
尾形が勇作様を殺めてしまうのも、
｢止めちゃだめなんだろうな....｣
ゴールデンカムイという物語に尾形百之助という人物は欠けてはならない存在だ
花沢勇作を殺めなかった場合、彼は杉元たちの元に現れないだろう
｢まじでなんにもできないじゃん｣
憂鬱な気分が周りを取り巻いていく気がして俯く
｢菊田さん！どうしました？｣
部屋へ戻ろうとすると、こちらに走ってくる男が見える
菊｢戦争が始まった｣
｢はい、月島軍曹から聞きました｣
菊｢ああ、出陣前にお前に会いたくて.....｣
｢まだ大丈夫なんですか？さっきみんなが出ていくのが見えましたが｣
菊｢奉天での待機命令が出たんだ｣
｢奉天...｣
奉天会戦といえば満州国を巡った戦いだ。つまり、
｢清まで、行っちゃうんですか｣
菊田に近づき裾を掴む
菊｢そうだ。待っててくれるか？｣
Aを引き寄せて今までにないくらい強く、それでいて優しく抱きしめる
｢必ず、無事でいてください｣
菊｢当たり前だろう？｣
我ながら最低だな
菊田さんがどうなるかなんてわかりきっているというのに。
ここで待っていても戻ってくることはないのに。
次に会うのはきっと登別温泉だ。それまでは、
｢さようなら、杢太郎さん｣
菊｢はは、相変わらずお前には敵わないな｣
切なそうに微笑みながら頭を撫でられる
菊｢次会った時も、そうやって呼ぶって約束してくれ。どんだけ姿が変わったとしても、お前だって気づけるから｣
もちろん、と言いながら体を離すと、すぐに部屋に入る
きっと私の姿が見えている内は歩き出せないだろうから、そんなことを考えながら扉を閉めた
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作者名：百 | 作成日時：2024年1月24日 0時
