【金カム】祝福された道 (ページ28)

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尾｢おい、どこ行く｣

扉に向かうと腕を掴まれる

｢彼に会えるように鶴見中尉に掛け合いに行くんです！｣

尾｢まだ軍に入ったばかりのやつにそんな時間があると思うか｣

｢あ、たしかに｣

それは考えていなかった。だけどどうしても関わっておく人物だとは思う

｢じゃあ明日とりあえず鶴見中尉にいつ頃になったら会えるか聞いてみます....痛いッ！｣

例のごとく加減を知らない力で腕を引っ張られベッドに倒れ込む

尾｢なぁ、なんでそこまでして会いたがるんだ？｣

下を見るとなぜか険悪そうな表情をした尾形の顔が映る
すっかり銃を床に置いてA見つめることだけに集中している

｢いやそんな顔されても、後から大事になってくる人物なので....｣

尾形がのそのそとベッドに上がってくる

尾｢お前の想い人なのか？｣

｢いや、え？想い....？違いますよ！｣

まさか想い人、なんて綺麗な言葉がこの人から出てくるなんて思わなかった

尾｢そうか｣

なんだか今日はやけに距離が近い。それに口調がいつもよりいくらか優しい

｢尾形さん、｣

下を向く尾形の顔をのぞき込むと、なんだ？という表情で顔を傾ける

｢なにかありました？｣

尾｢....もう寝る｣

そう言うと背を向けてしまう。やはり今日は何か様子がおかしい

｢そうですか、おやすみなさい｣

だからといって踏み込みすぎるのは良くない。すっかりそっぽを向いてしまった尾形を見つめて寝転ぶ

尾｢宇佐美が、｣

いくらか無言が続いた後小さく呟く声が聞こえる

尾｢お前が想い人に会えたらここからいなくなると｣

どんどんと小さくなる声に心臓が締め付けられるような感覚になる

この人が、私から離れることを恐れている？

｢離れていくわけないでしょう。だって...｣

私が愛してるのはあなたなんですから。

そんな言葉が思わず口から出てしまいそうで、ぐっと飲み込む

その代わりに尾形の頭を撫でる

思えば自ら尾形に触れたのはこれが初めてだったかもしれない

｢尾形さん？...｣

朝目覚めるとすでに隣は冷たくなった布団だけが残っていた

今日は早かったのかな。そんな呑気なことを考えながら瞼を擦り部屋を出る

｢A！｣

｢月島軍曹？どうしたんです？｣

扉を開けていきなり飛び込んできた景色は銃を抱え走る月島軍曹だった