【金カム】祝福された道 (ページ22)

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｢よぉ、夜中に男の部屋から出てくるとはご立派なもんだな｣

菊田さんが寝たタイミングを見計らってそっと扉を閉めたところで、三十年式小銃を持った尾形が現れる

｢シー今ちょうど菊田さんが寝たところなんですよ｣

そう言って尾形の背中を押して歩き出す

尾｢なんでコソコソしてんだ？｣

少し振り向いて眉を上げるその仕草にAは思わず下を向く
そもそも扉を開けたら尾形百之助がいるという有り得ない状況に心臓がひっきりなしに叫んでいる

｢菊田さんに出ていくなって言われたからです｣

尾｢じゃあなんで出てく？｣

｢あなたの近くにいるためですけど｣

尾｢はは、俺に銃を教えてもらうのに必死って訳だ｣

機嫌良さそうだな、とAは思った

きっと尾形のことだから自分に少しでも執着してくれる人間を自然と求めてしまってるんだろう

｢そうですよ、もう必死です｣

本当は銃などどうでもいい。もちろん使えるに超したことはないが、第一に優先すべきは尾形のそばにいることだ

尾｢入れ｣

尾形は部屋の前に来ると扉を開けて顎で指す

｢え、私こっちの部屋使いますよ｣

そう言って隣の扉を開ける

尾｢いいから、来い｣

えー、と言いながらも入ると銃が並べてあるだけの質素な部屋が見える

｢わー！ここから撃てるんですね｣

大窓の外を見ると銃痕が重なるいくつもの的があった

尾形は大窓を開けると座り込む

そして狙いを定めると、連続して全ての的を射止めた

尾形は少しこちらを見ると頭を撫でる仕草をする

これは、褒めて欲しいんだろうか

｢天才ですね、びっくりしちゃいました｣

フフンと鼻で笑う尾形を見るにこれで正解だったのだろう

尾｢お前がどのくらいの能無しかは見てみんとわからんが、まぁ俺が教えればなんとかなるだろ｣

｢そうですか、期待してます｣

この人の言葉は毎回正解が分からない
今の言葉だってもっと愛想を良くした方がいいと思ったが、何となく満足そうな表情を浮かべている

尾｢おい、起きろ｣

｢え？｣

目を開くと眩しいくらいの太陽の光が視界に入ってくる

尾｢座ったまま寝るとは、軍人に向いてるんじゃないか？｣

銃の手入れをしながらこちらを見もせずに馬鹿にしたように言ってくる

｢尾形さんは起きてたんですか？｣

尾｢ああ、銃を撃ってたどうせすぐ夜明けだったからな｣

それに、と付け足す

尾｢お前がもたれかかってくるから邪魔で寝れたもんじゃねえ｣

露骨に嫌そうな顔をしながら肩を払う仕草をする